演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
「甘い飲み物が好きですか」

そう尋ねると、彼女はうーんと唸った。

「こういう場所では、酔えないですからね」

意外な返事だった。

彼女はカシスオレンジを飲みながら、周りの話を聞いて笑っている。

隣の席だと言うのに、遠くに感じるのはなぜなのだろう。

ふと彼女の手がブラっと下がり、俺の手に触れた。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

指と指だけが、少しだけ触れる。

彼女は指を退ける仕草もない。

わざとやっているようにも見えた。

俺は試されているのだろうか。

そっと彼女を見た。

周りの席の話に夢中になって、俺と指が触れているのなんてお構いなしだ。

そこで俺の心が動いた。

指が触れているのも動じないのだったら、もっと大胆にしてやればいい。

俺は思い切って彼女と手を握った。

ちらっと彼女を見ても、微塵もこちらを向かない。

でも、俺は見逃さなかった。

彼女の少しだけ照れている顔を。

可愛らしいと思った。

そんな一面もあるのかと。
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