演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
そうだった。彼女は、伊藤萌奈という代替不可能な「女優」なのだ。

一度その華やかな、しかし過酷な演じる世界に身を投じれば、彼女の代わりはどこにもいない。

スケジュール、巨額の制作費、スタッフの人生。

妊娠というリスクは、彼女のキャリアだけでなく、彼女が今掴み取ろうとしている夢のすべてを狂わせかねないものだった。

俺を拒絶しているのではない。

一人の女として俺を求めながらも、同時に、自分の生きる世界を守るために必死に理性を繋ぎ止めているのだ。

そんな彼女の痛いほどのプロ意識と切実さに、胸が締め付けられる。

「……分かった。バカな真似をして悪かった」

俺は彼女の額にそっと優しいキスを落とすと、ベッドサイドに置いていたカバンを引き寄せた。

中からコンドームを取り出し、ピリッと小気味よい音を立てて入り口を開ける。

自分の脈打つ欲望にそれをあてがい、根元までしっかりと覆った。

再び彼女の身体の上に覆い被さる。
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