君と歌姫はじめました!
アコースティックギターであれば零が持っている。

マイクは購入圏内。

カメラも最低限でいい。

そして、少しだけ息を吐く。

「……意外と、いけるな」

静かな独り言。

有栖はその横顔を見ながら、小さく体を起こした。

画面にずらりと並ぶ価格帯。

安いものから、驚くほど高いものまで。

零はその中からいくつかを開いて比較しながら、小さく息を吐いた。

「ギターはあるし.....」

ぶつぶつと独り言のように言う。

「マイクはこれくらいでいけるとして……あとカメラか」

有栖がむくっと起き上がった。

「カメラって必要なの?」

「スマホでもいいけど、画質は安定させたいでしょ」

「ふーん……?」

あまり実感のないまま、有栖は膝を抱える。

そんな有栖をよそに零は指を動かし続けた。

必要なものを一つずつ積み上げていくみたいに。

ギターは既にある。

マイクは購入圏内。

編集ソフトは無料のもので開始可能。

撮影機材も最低限で済ませられる。

「……意外と、いけるな」

零が小さく呟いた。

「いけるの?」

「うん。二人の貯金合わせれば」

「まじ」

有栖は不安と驚きが混ざった顔になる。

零は画面を見たまま続けた。

「最初はマイクとギターで十分だし、撮影場所は公民館借りればいい」

「あ、公民館使うの?」

「うん。調べたら、ホール防音らしいから」

「へぇ……」

少しだけ現実味が出てきた。

零はさらにリストをまとめていく。

1時間後。

ノートパソコンの画面には、簡素な表ができていた。

【初期費用】

・マイク

・簡易オーディオ機器

・カメラ(最低限)

・備品

合計:約1万円程度

有栖はそれを覗き込んで、目をぱちくりさせた。

「……ほんとに始まるんだ」

「うん」

「え、軽くない?」

「軽くしないと続かないでしょ」

零はそう言って、ワープロに戻る。

そしてもう一つの行を追加した。

『顔出し:なし』

「絶対バレたくないしね」

「うん」

有栖は即答する。

「ネットって怖いじゃん」

「怖いね」

「だからこれでいい。」

少しだけ強い声だった。

零はその横顔を一瞬見て、何も言わずに続きを打つ。

『匿名ユニット』

さらにその下。

『両親のみ共有』

「友達には言う?」

「絶対無理」

有栖の即答に、零は小さく笑った。

「だよね」

「だよ」

画面には、少しずつ形になっていく『計画』が並んでいく。

まだ名前すらないのに。

それでも確かに、二人の何かが動き始めていた。


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