余所者-よそもの-
すでに意識のない男の顔面に何度も拳を叩きつける。
口は煙草を咥えて、ゆらゆらと上がる煙に目を細めながら血を浴びていた。
見つけた彼に一歩近づいた。
周囲の野次馬がなんとなくで作った境界線を超えて、また一歩、一歩と進んだ。
血を踏んだ頃、周囲の声が私を取り上げる。
「誰?」
「誰だ」
「まさかワってる?」
「ワってんの?」
「女だ」
「殺されんな」
「誰?」
「うわ。ワった、ワった」
私は紫藤怜の傍らに立った。
彼は私に気が付かない。
きっと彼の視界の端には、私の買ったばかりの靴は見えている。
それでも殴ることは止めない。
じり、と右の足先を少し動かした。
次に左の足先を動かすと、
「殺すぞ」
とようやく反応があった。