余所者-よそもの-
ユキはその後。
宣言通り30分で女性を帰すと仕事へ出た。
お酒は2杯ずつ。
ユキにあんな接客をさせておいて、なんて商売上がったりなんだって思ったけれど。
よくよく考えれば、だから逃げようとしたんだなと気づく。
今度から気を付けよう。
それからも、私のAnBarライフは順調に過ぎていった。
毎日毎日、少しずつ顔見知りのお客さんも増えて。
仕事だって覚えてきて。
営業が終わればユキと潤が遊びに来て、みんなの話にもだんだん混ざれるようになった。
みんなが帰れば、近くの銭湯でお風呂に入ってAnBarで眠る。
ある日、お客さんが私に言った。
「ここは俺にとって隠れ家みたいなもので――…」
だから好きなんだと、新入りの私に熱く語ったお客さんに「これからもよろしくお願いします」と答えた私は、忘れてしまっていたんだと思う。
すっかり、忘れていた。
賑やかで刺激的で、楽しい日々の中ですっかり抜け落ちてたんだ。
隠れているのは私だということ。
隠れ家に息を潜めていたのは、この私だということ。