余所者-よそもの-

ユキはその後。
宣言通り30分で女性を帰すと仕事へ出た。
お酒は2杯ずつ。

ユキにあんな接客をさせておいて、なんて商売上がったりなんだって思ったけれど。
よくよく考えれば、だから逃げようとしたんだなと気づく。

今度から気を付けよう。



それからも、私のAnBarライフは順調に過ぎていった。

毎日毎日、少しずつ顔見知りのお客さんも増えて。
仕事だって覚えてきて。

営業が終わればユキと潤が遊びに来て、みんなの話にもだんだん混ざれるようになった。

みんなが帰れば、近くの銭湯でお風呂に入ってAnBarで眠る。


ある日、お客さんが私に言った。

「ここは俺にとって隠れ家みたいなもので――…」

だから好きなんだと、新入りの私に熱く語ったお客さんに「これからもよろしくお願いします」と答えた私は、忘れてしまっていたんだと思う。


すっかり、忘れていた。

賑やかで刺激的で、楽しい日々の中ですっかり抜け落ちてたんだ。


隠れているのは私だということ。

隠れ家に息を潜めていたのは、この私だということ。





< 136 / 276 >

この作品をシェア

pagetop