余所者-よそもの-
「……多夜さん、放してッ!」
どん、と多夜の胸を突くと、やっと腕の中から抜け出せた。
そう思った瞬間、脇を抱えなおされ、両足が宙に浮く。
「どこに連れていくの?」
多夜は私を軽々と抱えて、歩き出す。
お腹の下にある腕をほどこうともがくけど、ビクともしない。
多夜が進む方向は、シドとは真逆の方向だ。
いくら声を上げても返事はおろか、その歩調にだって少しの影響もない。
やがて降ろされたのは、馴染みのあるここ。
車の中だった。
車に乗り込むと、運転する素振りもなくBGMをいじっている。
そんな多夜に問いかけた。
「どういう、ことですか」
「わかる必要がない」
「彼はどこに連れて行かれたんですか」
「在るべき場所に」
「酷いこと、するんですか」
「しても半殺しだろう」
私はその言葉に、スライドドアのロックを外した。
「ここを出れば、捕まえる」
忠告するように、一段階大きく車内に響く声。
「脚を、潰す」
静止した私を見て、運転席から再びロックがかけられた。