余所者-よそもの-
その声に、少し遠くの方にあった意識が手前に呼び戻された。
ユキが怒ってる。
Z地区って、なんだっけ。
どこかで聞いたことがある。
考えていると、ユキの声は少し遠くの方になった。
『潤ちゃん?今どこ?……ああ。シトウじゃなかった。潤ちゃん知ってるよね?Zのでっかいラブホ。馬鹿みたいに一日中キツイ香を焚いてる。……そう、その周辺。サンコンは?……は?いいに決まってる』
ゼット……そうだ。
サンコンの街案内の時だ。
――『 “ Z(ゼット)地区 “だけは決して、足を踏み入れてはいけません』
そこでキン、と甲高い金属音が鳴り響いた。
扉を見れば、ドアノブは上下に大きく揺れていた。
今にも外れそうなそこに、私は飛ぶようにしがみつく。
――ドンッ!ドンッ!
お願い、もう少しだけ耐えて。
心臓まで蹴破られそうな衝撃を受けながら、切実に祈っていた。