余所者-よそもの-
私は深呼吸をして、天井を仰いだ。
むき出しの蛍光灯。
その中に黒い虫の死骸が溜まっている。
学校の照明もこんなだったな。
ふいに、懐かしい気分になった。
なんでだろう。
なんか、思い出しそう。
頭の中に浮かんだ、古着屋。
学生時代にハマったお店。
何度も通って、店長と仲良くなった。
ああ、そうだ。
「なんか、窓から匂いがします」
『匂い?』
そう。
いつも買った服についてくる、古着屋さんの独特な香り。
店長に聞いたことがある。
いつも服についてくるこの香りって、どうやってつけてるんですか?って。
柔軟剤でもない、新品の匂いでもない。
とっても独特な香り。
私は古着よりも、この香りが大好きだった。
店長は教えてくれた。
そう、この匂いは――
「『お香』。これはお香の匂い。何番かはわからないけど、とっても似てる」
『窓から?』
「だけどとっても匂いがキツイ。お店で大量に焚いてるのかな……」
『……かぁこ』
ユキはそう区切ると、聞いたことのない声量で怒鳴った。
「お前、Z地区に居るのかっ!」