余所者-よそもの-
やがて、夜が明ける頃。
玄関の自動ロックがカチャリと外れる音が聞こえてきた。
「ユキさん、おかえりなさい」
「まだ居たの?」
「やりだすと止まらなくて」
時刻は早朝。
AnBarの閉店時間もすっかり超えて、作業に没頭していた。
ユキは思いがけない歓迎に驚いている様子。
「ちょっと綺麗になったね」
そう言いながらポイポイポイ、と、身に着けているものをその場に脱ぎ捨てながらリビングまで歩いてくる。
「……。まだまだ終わりそうにないですけど」
私の小さな嫌味に気づいているのかいないのか。
あっという間にシャツとスラックスだけの身軽な恰好になって、ソファに倒れ込んだ。
「ユキさん。相談があります」
「なに?」
「今、順番に洗濯をしてるんですけど、気が付きました。クローゼットはたくさんあるのに、収納がありません」
「ふむ」
「チェストがいくつか欲しいです。あとハンガーとか、小物を入れるものとかも」
「あれ取ってきて」
ユキはうつ伏せになったまま、さっき廊下に無造作に置いた鞄を指差した。
「はい」
牛革製のシンプルなビジネスバッグを差し出せば、財布から一枚のクレジットカードを抜いて、私の目の前に差し出してきた。
「必要なものは全部これで買って」
「私が買い物していいんですか?」
「お前以外に誰が居るの。インテリアにこだわりはないし、奇抜なものでなければ好きなものを買って置いてくれて構わない。要らなきゃ捨てるし」
「わかりました」
ユキの家は物で溢れてる割に、必要なものがない。
洋服の整理から掃除道具まで一通り揃えたい。
大型のものはネット通販するとして、掃除道具は近くのドラッグストアを見てみようかな。
なんて、あれこれ考えながら受け取ったカードを自分の財布にしまう。
鞄を持ったついで。
今日はこの辺で帰ろうかと立ち上がると、ソファの上のユキと目が合った。