余所者-よそもの-
「どう?」
暗く、細い路地の隙間で、死神は俺にそっと囁いた。
「うん……いい、と思う……」
俺が恍惚として感覚に酔いしれると、聞いてもいないのに死神はいろいろなことを愉快気に喋った。
ここは糸冬町という。
その中でもここはZ地区といって、隔たれた区画。
死神は俺に相応しい場所だと、そう言った。
なぜなら、どんな苦しみからも悲しみからも。
どんな苛立ちだって、後悔だって。
果てには強烈な愛さえも、忘れる術が此処にはある、と。
俺はそんな魔法のような術があるならと、
――ドラッグに、手を染めた。
俺には後にも先にも、愛おしいと思う女が一人、居た。
女の特徴を聞かれれば、決まって「母親みたいなヤツ」と言う。
だって、どこかおっちょこちょいで、おせっかいで、うるさい。
なのに俺がどれだけ裏切っても、きっと見捨てられないと思うほどの絶対的な安心感があった。
何がキッカケで狂ったのかは、もうわからない。
どれだけ殴っても、蹴とばしても。
どんな俺も受け入れたアイツに、俺は底なしの愛を求めた。
愛を確かめるように、何度も何度も傷つけた。
どれだけ願っても、時間は戻らない。
もう、それなら。
もう、二度とアイツをこの手に抱けないのなら。
俺が願うことはただ一つだった。