余所者-よそもの-

「ん?ヒくの?」
「ああ」
「金は?」
「車を……売ってきた」
「ははっ!お前もう帰れねぇじゃん」

俺は忘れたい。
過去の所業も、今の罪悪感も。

それはとても簡単なことだった。

手にあるモノを手放せば、ドラッグを買える。

車を売った。
キーケースを売った。
ネックレスを売った。
スマホを売った。
身分証を売った。

俺は手放すたび、ドラッグへの依存を深めていった。

だって仕方が無いじゃないか。


ドラッグのように依存した女を忘れるためには、これ以外の方法はなかった。


自分の荷物も、取り上げたカナの荷物も何もかもなくなって、最後。

手のひらに残ったのが、あの日の指輪だったのはたまたまで、偶然。


決して高価な物じゃない。
こんなもの、金に換える価値もない。

ただそれだけだ。


< 274 / 276 >

この作品をシェア

pagetop