恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 朝陽は照れ隠しのように頬を掻きながら小さく笑うと、

「その……例えば、どんなところっていうのを聞いてもいいですか?」

 恐る恐る尋ねた。

 その姿が可愛くて、亜佑美はふっと頬を緩めた。

「もちろん」

 そして、少しだけ考えるように視線を上へ向けると一つ一つ思い浮かべるように口を開く。

「まず、すごく優しいところ。困っている人を放っておけないし、誰に対しても誠実に向き合うでしょう?」
「それは……当たり前のことですよ」
「ううん。当たり前じゃないよ」

 亜佑美はゆっくりと首を横に振る。

「そういうのって分かっててもなかなか出来ることじゃない。それに、ちゃんと相手の気持ちを考えて言葉を選んでくれるところでしょ、それから真面目で努力家なところに、自分のことより周りを優先しちゃうくらい責任感が強いところとか……挙げたらキリがないかも」
「そんなにですか」
「うん。だから私は朝陽くんが誰かと比べて劣っているなんて一度も思ったことないよ」

 真っ直ぐ向けられる言葉にはお世辞も慰めもなく、心からそう思っていることだけが伝わってくる。

 その言葉が胸の奥へじんわりと染み渡り、朝陽の表情は自然と綻んでいく。

「……ありがとうございます。亜佑美さんに言われたから、もう悩みません。これからは自信を持とうと思います」

 吹っ切れたように笑う朝陽見て亜佑美も嬉しそうに笑みを返す。

「うん。その方が絶対にいいよ」

 二人は穏やかに言葉を交わしながらマンションへと戻っていった。

 部屋へ着き、後から入った亜佑美が扉を閉めた、その瞬間だった。

 ふわりと背中に温もりが重なるのを感じた亜佑美は、

「あ、朝陽、くん?」

 突然、後ろから抱きしめられたことに驚いて目を見開き、問いかけるように朝陽の名前を呼んだ。

 すると朝陽は腕にほんの少しだけ力を込め、そのまま亜佑美の耳元へ顔を寄せ、

「……早く、こうしたかったです」
「ーーッ!」

 低く穏やかな囁きが亜佑美の鼓動を高鳴らせた。

 頬がみるみる熱を帯びていくのを感じながらも亜佑美は身じろぎ一つ出来ず、朝陽の腕の中で静かに息を呑んだ。
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