恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
それから一時間ほどが経ち、陽向がマンションへやって来た。
三人はリビングでコーヒーを飲みながら腰を落ち着けると、朝陽は出張の日のことと亜佑美がストーカー紛いの被害に遭っている現状を改めて説明する。
一通り話を聞き終えた陽向はカップをテーブルに置くと苦笑した。
「ふーん、美人の彼女を持つと大変だな」
「陽向……」
朝陽が困ったように名前を呼ぶと陽向は気にする様子もなく話を続ける。
「つまり、俺がその日は亜佑美サンを迎えに行って兄ちゃんが帰ってくるまでここにいればいいってこと?」
「うん。そう」
朝陽が頷くと陽向はあっさりと答えた。
「いいぜ、別に」
「ありがとう、助かるよ」
朝陽が安堵したように笑うと亜佑美も申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんね、変なこと頼んじゃって……」
「別に、礼なんていいよ。それより、そのストーカー、早く捕まえねぇと面倒じゃん。心当たりがあるならそいつとっ捕まえて吐き出させればいいのに」
「いや……確証はないから」
「ふーん」
陽向は短く相槌を打つと今度はニヤリと含みのある笑みを浮かべながら朝陽へ視線を向けた。
「でもさ、兄ちゃんはいいのかよ?」
「いいって、何が?」
「俺と亜佑美サンが二人きりで家にいることだよ。本音はさ、嫌でしょ? 俺と二人にさせるの」
「……!」
思わぬところを突かれた朝陽は言葉を失う。
「そ、そんなこと……」
若干しどろもどろになる朝陽を見て陽向は肩をすくめた。
「ま、それだけ亜佑美サンのことが好きってことなんだろうけど」
「陽向……」
「安心してよ、俺は兄ちゃんを悲しませるつもりなんてないし、そもそも亜佑美サンは俺のタイプじゃないから」
「なっ……」
思わず顔を赤くする朝陽に陽向は笑いながら言葉を続けていく。
「兄ちゃんが大切にしてる亜佑美サンのことは俺が責任持って守る。だから安心して仕事してきてよ」
その言葉に朝陽の表情からようやく力が抜けた。
「……陽向、ありがとう」
二人の会話を黙って聞いていた亜佑美は恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
こうして話は纏まり、弟 陽向を自宅まで送る為三人で外へ出る。
駐車場で亜佑美が車のドアを開けようとした、その時だった。
「……っ!」
亜佑美の身体が小さく強張る。
(まただ……)
誰かに見られている嫌な感覚が背中を這い上がり、その変化に真っ先に気付いたのは陽向だった。
「今、誰かこっち見てた……よな?」
低い声で尋ねられた亜佑美は小さく頷く。
「うん……」
陽向は周囲へ鋭い視線を走らせるものの、それらしい人物は見当たらない。
「なるほどな……まあ、視線を感じるくらいじゃ確かに手は出せねぇってことか」
亜佑美たちが置かれている状況を実際に目の当たりにした陽向もその厄介さを理解する。
「悪いな、陽向まで巻き込むことになって……」
「いいって。いつも迷惑掛けてるのは俺だし、頼ってくれるの嬉しいしさ」
「陽向……本当にありがとう」
「どういたしまして」
出張の日については何とか段取りが出来たものの不安だけは誰の胸からも消えることは無く、不穏な空気を抱えたまま当日を迎えることになるのだった。
三人はリビングでコーヒーを飲みながら腰を落ち着けると、朝陽は出張の日のことと亜佑美がストーカー紛いの被害に遭っている現状を改めて説明する。
一通り話を聞き終えた陽向はカップをテーブルに置くと苦笑した。
「ふーん、美人の彼女を持つと大変だな」
「陽向……」
朝陽が困ったように名前を呼ぶと陽向は気にする様子もなく話を続ける。
「つまり、俺がその日は亜佑美サンを迎えに行って兄ちゃんが帰ってくるまでここにいればいいってこと?」
「うん。そう」
朝陽が頷くと陽向はあっさりと答えた。
「いいぜ、別に」
「ありがとう、助かるよ」
朝陽が安堵したように笑うと亜佑美も申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんね、変なこと頼んじゃって……」
「別に、礼なんていいよ。それより、そのストーカー、早く捕まえねぇと面倒じゃん。心当たりがあるならそいつとっ捕まえて吐き出させればいいのに」
「いや……確証はないから」
「ふーん」
陽向は短く相槌を打つと今度はニヤリと含みのある笑みを浮かべながら朝陽へ視線を向けた。
「でもさ、兄ちゃんはいいのかよ?」
「いいって、何が?」
「俺と亜佑美サンが二人きりで家にいることだよ。本音はさ、嫌でしょ? 俺と二人にさせるの」
「……!」
思わぬところを突かれた朝陽は言葉を失う。
「そ、そんなこと……」
若干しどろもどろになる朝陽を見て陽向は肩をすくめた。
「ま、それだけ亜佑美サンのことが好きってことなんだろうけど」
「陽向……」
「安心してよ、俺は兄ちゃんを悲しませるつもりなんてないし、そもそも亜佑美サンは俺のタイプじゃないから」
「なっ……」
思わず顔を赤くする朝陽に陽向は笑いながら言葉を続けていく。
「兄ちゃんが大切にしてる亜佑美サンのことは俺が責任持って守る。だから安心して仕事してきてよ」
その言葉に朝陽の表情からようやく力が抜けた。
「……陽向、ありがとう」
二人の会話を黙って聞いていた亜佑美は恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
こうして話は纏まり、弟 陽向を自宅まで送る為三人で外へ出る。
駐車場で亜佑美が車のドアを開けようとした、その時だった。
「……っ!」
亜佑美の身体が小さく強張る。
(まただ……)
誰かに見られている嫌な感覚が背中を這い上がり、その変化に真っ先に気付いたのは陽向だった。
「今、誰かこっち見てた……よな?」
低い声で尋ねられた亜佑美は小さく頷く。
「うん……」
陽向は周囲へ鋭い視線を走らせるものの、それらしい人物は見当たらない。
「なるほどな……まあ、視線を感じるくらいじゃ確かに手は出せねぇってことか」
亜佑美たちが置かれている状況を実際に目の当たりにした陽向もその厄介さを理解する。
「悪いな、陽向まで巻き込むことになって……」
「いいって。いつも迷惑掛けてるのは俺だし、頼ってくれるの嬉しいしさ」
「陽向……本当にありがとう」
「どういたしまして」
出張の日については何とか段取りが出来たものの不安だけは誰の胸からも消えることは無く、不穏な空気を抱えたまま当日を迎えることになるのだった。