恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 朝陽の胸に引っかかっていた違和感――それは、亜佑美が思っていたほど怯えていなかったことだった。

 陽向からメッセージで、《何度かインターホンを鳴らされる悪戯があった》と聞かされた時は居ても立ってもいられなかった。

 だから、先輩には申し訳ないけど理由をつけて飲みの誘いまで断り急いで帰宅した。

 けれど、いざ帰ってきてみると亜佑美は怖がるどころか穏やかな笑顔を浮かべていることに加えて陽向もどこか楽しそうで、二人の間にはすっかり打ち解けた空気が流れていた。

(……何か、むしろ楽しそうだった?)

 大好きで大切な二人が仲良くなってくれたことは素直に嬉しい。

 それなのに、胸の奥では言葉に出来ない小さな棘が引っかかったままだった。

(……いや、俺の思い過ごしだよな)

 そう自分に言い聞かせるようにシャワーを浴び始めた朝陽は頭からお湯を掛けて不安ごと流していく。

 それから着替えを済ませて浴室を出てリビングへ向かう廊下で、楽しげな笑い声が響いてきた。

 二人は何かで盛り上がっているらしく、時折笑い声まで混じっている。

 その明るい空気を耳にした瞬間、朝陽の胸が小さく痛んだ。

(考え過ぎだ……。二人とも仲良くなってくれたんだから、それでいいじゃないか)

 何度もそう言い聞かせながら気持ちを切り替えるように朝陽はリビングのドアを開ける。

「何だか楽しそうですね、何を話してたんですか?」

 リビングに入った朝陽は出来るだけ普段通りの明るい笑顔を浮かべながら自然な足取りで二人の輪へ加わっていった。
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