恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
一方的な想い
 界人も協力してくれることになり、仕事でもプライベートでも誰かが傍にいることで亜佑美は以前と変わらない生活を取り戻していた。

 それと同時に、あれ程悩まされていた気配もいつの間にか途絶えていた。

 初めのうちはこちらが警戒を強めていることを相手も察して行動を控えているだけなのだろうと思っていた。

 けれどそろそろ一ヶ月が経とうとしても状況は変わらなかった。

 誰かに見張られている様子もなければ、帰宅途中に後をつけられているような気配もない。

「職場でも家でも、常に誰かが傍にいるから相手も諦めたのかもしれねぇな」

 週末、四人で食事をしながら情報を交換していると陽向がそう口にした。

 亜佑美は小さく頷きながらもどこか不安そうな表情を浮かべる。

「そうだと良いんだけど……」
「昼休みも特に誰かがついてきてる気配はないんだろ?」
「うん。今のところは何もないな」

 これまでなら職場を出れば誰かの視線を感じることがあったけれど、ここ一ヶ月はそれらしい異変が一度も起きていない。

「……もう、諦めたってことかな?」

 亜佑美がぽつりと呟くとその言葉に隣に座る朝陽が少し考えるように黙り込んだ。

「その可能性もあるけど、まだ完全に安心するのは早いと思います」
「だよな」

 朝陽の言葉に同意するように頷く陽向と界人。

「一ヶ月何もないからって警戒を緩めた途端に何か起きる可能性もありますし、相手が本当に諦めたのか、それとも別の機会を狙ってるだけなのかは分からないですからね」
「……そうだよね」

 それを聞いた亜佑美も素直に頷いた。

 以前のように怯えて生活する必要はなくなりつつあるけれど、完全に安心してしまうにはまだ早い。

 四人は改めて今まで通り警戒を続けることを確認した。

 それから数日後、止まっていたはずの事態が再び動き出すことになる。
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