恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「お前……!」

 そんな男の腕を陽向が掴み、界人もすぐさま加勢する。

「離せ!」

 男は激しく抵抗して二人を振りほどこうとするけれど、

「クソ! 離せよ!!」

 陽向と界人が男を地面へ押さえつけてその動きを封じた。

 その弾みで男の手からナイフが落ちると、朝陽はすぐさまナイフを蹴り飛ばして男から十分に距離を取らせる。

 それでも男は抵抗を続けていた。

「ふざけんな! 俺が先に見つけたんだぞ!」

 何を言っているのか分からないけれど、異様な執着だけははっきりと伝わってくる。

 少しして、近くの交番から駆けつけた警察官が到着すると男はその場で身柄を拘束される。

「暴れるな!」
「クソッ! 離せよ!」

 男は最後まで喚き散らしていたが警察官に取り押さえられてそのまま連行された。

「詳しい話を聞かせてもらえますか?」

 四人は警察の事情聴取を受けることになり、これまで亜佑美の身に起きていたストーカー被害を中心に手紙や写真についても全て話していく。

 そして後日改めて話をすることで帰宅出来ることになり、朝陽の部屋へ戻って行った。

「……はぁ……マジありえねぇ……」
「だけど誰も怪我をしなかったことは良かったよな」
「だな……」

 ソファーにもたれるように座った陽向はその横に立つ界人と会話を交わす中、身体の震えが止まらない亜佑美は朝陽に支えられて寝室のベッドに腰を下ろした。

「大丈夫ですか? ここは安全ですから、ね?」

 その横に座った朝陽は亜佑美の身体を抱き寄せると、もう大丈夫であることを伝えて落ち着かせようとする。

「……あの人、……私、本当に知らないの……」

 亜佑美はあの男のことを全く知らなかった。

 それなのに敵意を向けられて殺されかけたのだ。

 未だにその事実が飲み込めずに戸惑う亜佑美に朝陽は、

「分かってます。亜佑美さんは何も悪くない。あの男が勝手に好意を寄せて、その想いを拗らせただけですから」

 ひたすら亜佑美は何も悪くないことを伝えていった。
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