恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「一つだけ、お願いがあるの」
「何ですか?」
「…………今から、敬語で話すの……やめてほしい」
「…………」
「陽向くんと話してるところを見てると……私も、そんなふうに話してもらいたいなって思いが強くなって……今日から正式に同棲するわけだし、もうそろそろ良いかなって……駄目、かな?」

 朝陽が自分に対して敬語を使うのも性格を考えれば仕方のないことだと分かっている。

 一度話した時も徐々に慣れるということは言っていたけれど結局直らなかった。

 こだわる必要はないと分かっていても、敬語で話されるたびに距離を感じてしまうのも事実で、これまではあくまでも居候のような立ち位置だったからそのままにしてきたけれど、今日からは正式に同棲する。

 それなら今このタイミングでこの話をするべきだと亜佑美は思い、自分の素直な思いを伝えたのだ。

 そんな亜佑美の気持ちを察したのか朝陽は困ったように眉を下げた。

「……えっと、なんて言うか……敬語を使うことに慣れ過ぎてて、すぐには直らないかもしれない……けど、少しずつ、使わない方向で……っていうのは、どう、かな?」
「……前もそう言ってたけど、全然直ってなかった……」

 亜佑美は頬をぷくっと膨らませて拗ねたような表情を浮かべて見せる。

「それは……ごめんなさい……今回はちゃんと直せるよう努力する……から」

 そう言ったものの、やはり言葉の端々には敬語が残っている。

「……その、怒らないで……?」

 でも、朝陽なりの精一杯なのだと伝わったのか亜佑美の頬から少しずつ力が抜けていった。

「……ふふ……ごめんね。怒ってないよ。分かった。今度こそ少しずつでいいから慣れてね?」
「……はい」
「ほら、また敬語」
「……あ」

 指摘された朝陽が気まずそうに口を閉じるも、その様子がおかしくて亜佑美はとうとう声を上げて笑うと朝陽もつられるように笑った。
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