恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 あの日、合コンで出逢った二人。

 亜佑美にとって恋愛対象はいつだってハイスペックな男性で、恋愛経験のない年下の朝陽のことは眼中になかった。

 けれど、風邪をひいた亜佑美が間違い電話をかけたことをきっかけに二人は少しずつ言葉を交わすようになった。

 何気ない会話を重ね一緒に過ごす時間が増えていき最初は意識していなかったはずなのに、いつしか亜佑美にとって朝陽と過ごす時間は何よりも大切なものへと変わっていた。

 それに気づけて良かった。

 朝陽と付き合えて良かった。

 亜佑美はいつもそう思っていた。

 ふと亜佑美は朝陽を見上げる。

「朝陽くん、私のこと、好き?」

 突然の問いかけに朝陽は目を丸くした。

「え!? す、好き……だけど、どうしたんです、突然」
「聞きたくなったの」
「……その、亜佑美さんは?」
「私も好きだよ。これからも一緒にいられるの、凄く凄く嬉しい」
「……俺もです」

 朝陽の返答に笑みを浮かべた亜佑美は少しだけ悪戯っぽく彼を見つめる。

「……キス、して?」
「…………何か、今日の亜佑美さん意地悪じゃないですか?」
「……だって……また敬語に戻ってるんだもん……」
「あ……ご、ごめん……」
「嘘。怒ってないよ」

 そして、もう一度上目遣いで朝陽を見る。

「でも、キスはして欲しい」

 まっすぐに向けられたその瞳に朝陽の心臓が大きく跳ねた。

「……亜佑美さん」

 名前を口にしながらそっと肩を抱き寄せた朝陽に亜佑美が身体を預けると、朝陽の顔がゆっくりと近づいてくる。

 そして――

「……っん……」

 唇がそっと重なった。

 触れるだけの優しい口づけ。

 ほんの一瞬だったはずなのに離れたあとも二人は言葉を発することができなかった。

 亜佑美は頬を赤くしたまま俯き、朝陽も照れを隠すように視線を逸らす。

 けれどキスの間に繋いだ手だけは離れず、寧ろ先程よりも強く握り合う。

「……何でだろ」
「え?」
「何回もキスしてるのに……今日のは、いつもよりドキドキした」

 その言葉に朝陽は照れくさそうに笑った。

「……俺も」
「ほんと?」
「うん。何でだか分からないけど、凄くドキドキしました」
「ふふ、何だかおかしいね。もうすぐ半年経つのに」
「でも、こういう気持ちって大切な気がするから……感じられて、嬉しいかも……」
「……そうだね。これはこれで私たちらしいのかも」
「ですね」

 交際期間がどうとか、関係ない。

初々しさは二人にとって大切な感情で、二人の愛の形の一つなのだから。

「さてと、そろそろ寝よっか」
「そうだね」

同棲を開始した二人の愛のストーリーは新たな幕を開けてこれからも続いていく――。


 -END-
< 160 / 161 >

この作品をシェア

pagetop