恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 今日観るのは、公開以来話題になっている恋愛映画。

 お互いに惹かれ合っていたにもかかわらず些細なすれ違いで離れてしまった二人が偶然再会し、友人として距離を縮めながらも失うことが怖くて気持ちを伝えられない。

 そんなもどかしい時間が続いた物語の終盤、ヒロインが雨の中で泣きながら立ち去ろうとした時、ヒーローが彼女の腕を掴み、『もう友達じゃいられない』と震える声で告げる。

 そして、『あの頃からずっと好きだった』と告白したヒーローにヒロインも、『私も――ずっと好きだった』と想いを伝え合い、両想いだったことが分かった二人は抱き締め合い、そのまま唇を重ねた。

 スクリーンいっぱいに映し出されるキスシーン。

 その瞬間、亜佑美は妙に隣が気になった。

 すぐ隣には肩が触れそうな距離に朝陽が居て、視界の端で朝陽もじっとスクリーンを見つめているのが分かった。

 そんな二人の手は肘掛けの近くに置かれていて、少し動かせば触れてしまいそうな距離にある。

(手、繋ぎたい……)

 ふいにそんな衝動が亜佑美の頭を過る。

(触れたらどんな顔、するかな)

 そんなことを考えてしまうも亜佑美は慌てて視線をスクリーンへ戻し、ぎゅっと自分の手を握り込む。

 その間にも映画は進みエンドロールへ。

 亜佑美の心臓は映画が終わるまで落ち着くことがなかった。

 やがて館内が明るくなる。

「……終わりましたね」
「う、うん」

 返事をしたものの、亜佑美は自分の声が少し上擦っている気がするし、朝陽もどこかぎこちない感じがした。

 それは恋愛映画の余韻なのか、それとも別の何かなのか、二人ともその答えは分からないまま席を立ち、人の流れに合わせて映画館を出た。

 外へ出ると、ようやく少しだけ息がしやすくなった気がした。

「良い映画でしたね」
「そうだね」

 朝陽の言葉に答えながらも亜佑美の胸の鼓動は未だ速いまま。

 隣を歩く朝陽との距離はいつもと変わらないはずなのに、亜佑美は何故か妙に近く感じていた。
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