恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 それからどれくらい眠っていたのか、遠くで鳴るインターホンの音に、亜佑美はゆっくり目を開けた。

「……は、い……」

 ふらつく身体を無理やり起こし、玄関へ向かう。

 そして扉を開けた瞬間、

「大丈夫ですか!?」

 そこには息を切らした朝陽が立っていて、両手にはコンビニ袋がいくつも下がっている。

「すみません、寝てましたよね? あの、飲み物と、それから消化に良さそうなものと……あと薬も買ってきました」

 矢継ぎ早に言いながら袋を差し出す朝陽の姿は、合コンの時とはまるで別人だった。

「あの……わざわざ、ありがとう……」
「いえ。それじゃ、俺はこれで」

 そう言って帰ろうとする朝陽に亜佑美は少し驚いた。

(上がら、ないんだ……)

 まあ、風邪を移しても申し訳ないし、移りたく無いのかもしれないと、亜佑美は袋を受け取って部屋へ戻ろうとした時、

「あっ……」

 手から袋が滑り落ちてしまう。

 それを拾おうとした瞬間、熱でふらついた身体がそのまま傾いた。

「危ない!」

 袋が落ちる音に気付いて戻ってきた朝陽が咄嗟に支える。

「大丈夫ですか!?」

 強い腕に抱き起こされた亜佑美は苦しそうに息を吐いた。

「すみません、少しだけ失礼しますね」

 そう断ると、朝陽は亜佑美を抱き抱えたまま部屋へ入る。

 そして、亜佑美をベッドへ寝かせた後、すぐにキッチンへ向かい買ってきたものを手際よく並べ始めた。

 飲み物を冷蔵庫へ入れ、薬を準備する。

 その動きは驚くほど自然だった。

「あの、これ食べられそうですか?」

 ゼリーとスプーンを差し出された亜佑美はぼんやり朝陽を見る。

「……ありがと」

 小さく呟くと、朝陽は安心したように笑った。

「よかった……安心しました」

 その笑顔はどこか幼くて、それなのに妙に頼もしい。

「ここに置いておくので、食べ終わったら薬飲んでくださいね」

 ベッド脇へ水と薬を置き、朝陽は再びキッチンへ戻っていく。
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