恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
朝陽と陽向
 食事を終え、亜佑美と共に洗い物をしている朝陽をソファーから眺めていた陽向。

 その視線に気づいた朝陽は小さく溜め息を吐く。

「亜佑美さん、ちょっと離れますね」
「あ、うん」

 そして手を止めて亜佑美に一言断ると陽向の方へ歩いて行き、

「何だよ? さっきからじっとこっち見て。言いたいことがあるなら言えよ」

 視線の理由を問い掛ける。

「別に……ただ観察してただけだし」
「何だよ、観察って」
「二人の時はどういう感じなのかなって」
「あのなぁ、それを知ってどうするつもりだよ? っていうか食事は済んだんだからいい加減帰れよ」
「兄貴、送ってよ」
「はあ? 今日は亜佑美さん居るから無理」
「いいじゃん、送るくらい。いつもしてくれるのに、彼女居るから無理って酷くない?」

 陽向の言葉に困り果てる朝陽。

 そんなやり取りをキッチンから見守っていた亜佑美は手を止めると二人の元へ歩いて行き、

「朝陽くん、私は待ってるから陽向くんのこと、送ってあげて?」

 陽向を自宅まで送るよう伝えると、

「ほら、彼女もこう言ってるし、いいじゃん」

 嬉しそうに口角を上げる陽向を前にした朝陽は考えた末に、

「……はぁ、分かった、亜佑美さんも一緒にならいいよ」

 亜佑美も同行する形でなら送ると言い出した。

「俺、兄ちゃんと二人が良いんだけど」

 亜佑美も一緒という言葉に陽向は不満げな声を漏らすも、

「嫌なら一人で帰れよ」

 そこは譲らない朝陽。

「朝陽くん、私は留守番してるから……」

 陽向の気持ちを汲んだ亜佑美がそう付け加えるも、

「駄目です。亜佑美さん、俺が居ない間に異性を簡単に部屋に上げるから……心配で置いていけないです」
「……ご、ごめんね……きちんと確認しなくて……」
「すみません、怒ってる訳じゃないですし、今回のことは陽向が悪いんですけど、やっぱり心配なので」
「……うん」

 朝陽の言葉に、それ以上何も言えなくなる亜佑美は黙り込む。

「それで、どうする? 一人で帰る?」

 再度選択を迫られた陽向は、

「……分かったよ、一緒でいい」

 亜佑美が同行することを渋々納得し、三人で陽向を実家まで送ることになった。
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