ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
「……術が完成して報告も後回しにして一番に会いに行ったのに、故郷に帰ったって言われた僕の気持ちを、サエは考えたことがある?」
「そ、れは……」
「あの日の様子がおかしかったから気になってはいたけど、まさか帰る方法を知ってたなんて思わなかった。もしそのことをわかってたら遠回りなことはしないで、屋敷に閉じこめて……僕がいないと生きられないようにすれば良かったって、本気で思ったぐらいだ」
「……っ」

 その言葉の真意を問いかけようとしたけれど、抱き締めてくる腕が、体が震えていることに気付いて、言葉が出てこなかった。
 混乱して、どんな行動を取るのが最善なのか判断ができない。
 だがこの腕からは逃れられなくてはと身動きしようと身を捩り、後ろ手に触れた壁に縋ろうとしたが、そのまま押し付けられて、彩瑛は本格的に逃げ場を失ったことに気付いた。
 肩に掛けたままのショップバッグが、がさりと音を立てた。

「だからサエ、今度は誤魔化さずに、ちゃんと教えて」

 壁に押し付けられ、手首を掴まれて、覗き込んでくる琥珀色が追い詰めてくる。腰を抱いていた手が伸びてきて、細くて骨張った指先が彩瑛の頬を撫でた。

「――殿下に、何を言われたの」

 ひゅ、と彩瑛の喉が鳴った。その反応に、ギルベルトの瞳が細まる。
 嫌な汗が、背中を伝った。
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