ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
 掴まれていない方の手で鞄を漁り、マスコットの付いた鍵を鍵穴に差し込む。扉が開くと、ギルベルトは彩瑛を先に押し込むように部屋に入れた。
 彩瑛の頭の中に、どうしよう、どうしようと頭の中で同じ言葉ばかりが繰り返される。先ほどまでの浮かれていた気持ちはすっかり沈んでしまった。
 それどころか、嫌な考えばかりが頭に浮かんでくる。嘘を吐いて約束を反故にしたのは事実だ。しかもギルベルトはあの世界では貴族という身分にある。最悪、不敬罪等の罪に当たる可能性もあったことに気付き、背中に嫌な汗が流れる。
 彩瑛が俯いて動けないまま立ち尽くしていると、ギルベルトの手にあった紙袋は、いつの間にか玄関と廊下とを繋ぐ段差のところに置かれていた。
 背後で、がちゃりと玄関の鍵が施錠される音がした。彩瑛のあとに部屋に入ったギルベルトが鍵を閉めたらしい。鍵の構造は、あの世界とよく似ていた。

「サエ」

 名前を呼ばれて、彩瑛の体が震えた。目を瞑って、沙汰を待つ。
 けれどそのあと訪れたのは、体を包み込んでくる温もりだった。思わず彩瑛は息を飲む。
 腰を抱く腕が、離すまいと彼女の体を抱き締めていた。細身にも関わらず、ギルベルトが引き寄せる腕は強い。
 ふわりと彼の匂いが鼻を擽り、あの日抱き締められた記憶が頭を過ぎった。途端に、彩瑛の頬に熱が集中する。

「ギ、ルベルト……さま……?」

 名前を呼ぶけれど、ギルベルトの腕が緩まることはなかった。
 代わりにため息をひとつ吐いて、口を開いた。
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