ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
「サエがいなくなったことを僕に伝えてくれたのは殿下だったんだ。君たちが会って話をしたことも、そのときに聞いた。そのあと店に行ったけど当然君はいなくて、代わりにあの魔女から帰ったと言われて――頭の中が真っ白になった。怒りも覚えたし、悲しくて仕方がなかったな」

 思い出しながら、ひとつひとつを辿るようにギルベルトは言葉を紡ぐ。


「僕とサエでは生まれ育った環境が違う、生活も違う、そして世界が違う。元々サエの存在はイレギュラーだった。だからいなくなったとしても、君がいなかったときに戻っただけ。早く忘れてしまった方がいいと、魔女には言われた。だけど――」

 腹部に回されたギルベルトの腕の力が、心なしか強くなったような気がした。

「僕の世界はサエがいたから色づいた。言ったことあったかな。君と出会う前の僕の世界には色なんてなくて、温度もなかったって」
「っ」
「サエと会わなければ、人の温かさも、食事の美味しさも、街の喧噪が意外に心地良いことも、きっと知らずに死んでいたと思う。今更いなかったときには戻れないし、何より、僕が君のことを忘れることができなかった。……泣きながらちゃんと食事を取ってと言ったときのこととか、美味しそうに食事をする姿とか、酔っぱらって口を滑らせたときのこととか、少し眠ると夢に見るのはいつもサエのことばかりで、目が覚めて君がいないことに絶望した」

 ずきずきと彩瑛の胸が痛む。
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