ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
「……ギル、と会えて、こうしてまた喋ってるなんて、不思議だなって思って……もう二度と、会えないと思ってたから」

 思考を何とか切り替えて、彩瑛は何とかそう返す。
 生きる世界が違うと気付いて、逃げるように元の世界に帰ってきた。|《帰ってくる》方法は一度限りだけど存在するが、あちらの世界から|《渡ってくる》方法はないと魔女から聞いていたから、今生の別れだと覚悟して。
 だからまさかギルベルトが|《渡ってくる》方法を作り出した上、会いに来てくれるなんて思わなかった。

「約束破って……何も言わずに帰ってしまって、ごめんなさい」

 誠意を示すならば、きちんと目を見て謝るべきなのだとはわかっている。
 けれど向けた瞳の先に怒りや怨み――ネガティブな感情が浮かんでいたら。そう考えたら見ることが怖くて、結局俯いてしまった。
 シャワーヘッドから、水滴が落ちる。

「サエ」

 水音が反響した――その直後に、ギルベルトは静かな声で彩瑛の名前を呼んだ。
 びくり、と彩瑛の肩が揺れる。

「研究室から出てきて、真っ先にサエに会いに行こうと思った。術の完成を伝えたかったこともあるけど、一番の理由は単純に君に、会いたかったから。――だけどそのときにはもう、サエはあの世界にいなかった」

 ギルベルトの言葉に彩瑛はくちびるを噛んだ。
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