トワイライト〜ふたりで奏でる最高の歌〜
ふたつの音
翌朝。

まだ空が薄青い時間。

私は制服の上からカーディガンを羽織って、静かな玄関でスニーカーを履く。

時計を見ると、いつも家を出る時間より一時間以上早い。

こんなに早く学校へ行くのは初めて。

「……いってきます」

小さく呟いてドアを開ける。

ひんやりした朝の空気が頬を撫でた。

私はスマホを握りしめたまま、早足で学校へ向かった。

早く会いたい。
早く、ちゃんと伝えたい。

小さい頃から、朝が来るのが憂鬱だった。

たくさんの集団の中に混ざるなか、お話をしたり、はたまた授業で先生に当てられて自信のない答えを発表したり。

今だって、まだまだ人が怖い。
私はまだあの頃と何も変われていない。

それでも……朝ちゃんとなら、そんな自分も、人生も、丸ごと好きだと思えた。

1人じゃみれない景色を、たくさん見せてもらったから。

気がつけば、あっという間に学校の前に着いた。
校門を抜け、校舎の後ろにある旧校舎へと向かう。

静かな廊下。

私の足音だけが、やけに大きく響く。

放送室の前で立ち止まり、扉に手をかけたその時。
扉の向こうから、かすかに声が聞こえた。

この声……!!

その瞬間、胸の奥が熱くなる。

私は震える手で、ゆっくり扉を開けた。

朝焼け色の光に包まれた元放送室。

まるで、初めて私たちが出会った日みたいな───

窓際に座った、栗色のサラサラの髪をなびかせた彼女朝が、こちらを振り返る。

「……よる」

その声を聞いた瞬間。

涙が一気にぶあっと溢れて、私はそのまま彼女の胸に飛び込んだ。

「……ごめんねっ!!朝ちゃんっ!!」

自分でもびっくりするくらい大きな声だった。

朝ちゃんの制服をぎゅっと掴む。

涙が止まらない。

「わ、私っ……朝ちゃんの気持ち、ちゃんと考えられてなかった……!自分のことばっかりで……っ本当にっ」

言葉がぐちゃぐちゃになる。

それでも、今は、朝ちゃんがちゃんと受け止めてくれるって信じてる。

朝ちゃんは、何かを言うよりも先に、私の背中に回す腕の力をちょっぴり強めた。

「ううん。私の方こそごめん。ひとりになりたいとか言って逃げた。弱い自分を、よるには見せたくなくて」

よ、弱い?朝ちゃんが?

私はゆっくり顔を上げた。

朝ちゃんの目も、涙を流していて真っ赤。

「……私の話、聞いてくれる?」

「うん」

私が頷くと、朝ちゃんは「ちょっと長くなっちゃうんだけどね……」と、ゆっくり話し始めた。
< 18 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop