トワイライト〜ふたりで奏でる最高の歌〜

朝菜 side


『朝菜ちゃんのお顔は本当にきれいね』

『ほんとお人形さんみたいにかわいい』

"きれい" "かわいい"

そんな言葉は、次第に私にとって呪いの言葉になっていった。

物心ついた頃から、親戚や周りの大人からそう言われること多くて、小さかった私は、大人から褒められていると言うことが単純に嬉しかった。

可愛らしい髪型をして、おしゃなお洋服を着るたびに周りは喜んでくれた。

でも、小学校に上がって少しずつ、それはそんな単純なものじゃなくなっていった。

『吉村さんって、なんかぶりっ子だよね』

『先生たちも、朝菜には優しいよね〜』

『……朝菜ちゃん、真由が廉くんのこと好きだってわかっててあんなに仲良く話して信じられないっ』

『男子ってほんと、吉村さんみたいな子が好きだよね〜』

普通に仲良く話してくれていた子たちから、陰でコソコソと悪口を言われることが増えていった。

人から嫌われる、そのことがすごく怖かった。

だから、学校で上手に生きていくために、女の子たちから嫌われないために、色々と努力した。

男の子とはできるだけ話さないようにして、かわいい小物を持つことをやめた。

そうしていたら、学校では、それなりにうまくやっていけるようになった。

目立ちすぎず。
空気を読んで。

そんなバランスの取り方に慣れてきた頃だった。

小さい頃から続けていた合唱団での出来事だった。

『また朝菜ちゃんがセンターか』

イベントで行うミュージカルの選抜が決まったあと、昔みたいに、みんなが影で私の話をしているのを聞いた。

『絶対顔で選ばれてるじゃん』

『主役は絶対柚月ちゃんだと持ったけどな。実力的に』

『しかも今回のテスト、朝菜ちゃん音外してたじゃん』

『結果見た目かぁって思うと、真面目に練習してるのバカみたいだよね』

胸が、ぎゅっと痛くなって、その場から猛ダッシュで逃げてうずくまった。

私は、歌うことが好きだった。

合唱団の日は、学校より少しだけ息がしやすかった。
声なら、“見た目”なんて関係なかったから。

でも、違った。

どこへ行っても、“吉村朝菜の顔”がついて回る。

悔しかった。

自分より実力がある子がいるなんて、自分が一番わかっていたから。

だからこそ、私は、たくさん練習した。

それでも、どんなに努力しても
“顔がいいから”
の一言で片付けられてしまう。

まるで、ずっと楽をしているかのように。

鏡を見るたび思う。
この顔じゃなかったら。

その日、私は合唱団に通うことを辞め、歌うこともやめてしまった。
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