乳吸鬼♀&未来偵察メイド:悪魔と共に在る世界 ※(関連作の目次リンクあり)
第四話 ミルクと卵の循環
(1)
ここまで来るまでに何度も死んだり殺された気がする。眠りの中でそのリセットされた結末の記憶を反芻していた。悪夢。忘れていたとしても深層に残っている記憶が再生されて、目覚めた時間の直感的な知恵に消化や結実されていく。他者の破滅の記憶までが流れ込んでくるようだ。
そんな夢の中で不安と恐怖に苛まれながら、腕の中で温かい何かが落ち着きと安心を与えてくれていた。だから、これまでの何十倍もの悪夢に見舞われながら、昔のように夜中に叫びながら飛び起きることもなかった。
意識が現実に引き戻される。
朝だ。部屋の中が明るくなっている。
横たわっているのは上質なベッドとお布団。
そして。
薄目を開ければ、ルントゥの寝顔。
すると一気に、レトラは昨晩までの記憶が戻る。急に顔が火照ってきてしまう。どうしようと迷った矢先に、ルントゥが瞼を開く。
夜闇では気がつかなかった、深いアメジストの奥ようなパープル。けれども透明ではなく、紫と金銀の金属が入り混じる粒子が混ざり込んだり裏打ちしているかのような、魅惑的で神秘的な光が織り込まれている。こうして明るい中で間近に覗き込むとよくわかる。
その瞳には見覚えがあった。
鉱物質な独特に輝くルントゥの虹彩は、レトラに白金貨と魔法の針を与えたあの青年に雰囲気が似ている。色調は違っていたが、パターンや種類が近いかもしれない。
隣の二十センチに横たわるレトラの熟視に気がついたのか、半魔族の少女はクスリと微笑んだようだった。寝起きで気にならなかったが、これほど近いというのはキスでもするのでない限りは珍しい。窓からの陽光で光をおびた淡いブロンドの頭は自分の腕を枕にしている。抱き合った感触からして服を着ていないらしいことに気がつく。
「おはよう」
ルントゥは悪びれもしない、ほがらかな小声で囁いて身体を起こす。掛布が肩を滑り落ちて、シルクの魚のような裸身に座り込んで、レトラは息を呑んでしまう。きっと自分よりも何倍も可憐で美しい彼女がありふれた自分を求めてきたのが信じられなくなる。
思い出せば頬が火照ってきそうだった。
まるで落ちてくるように顔が迫る。
おでこ同士が触れた。
「熱でもあるのかと思ったけど。大丈夫みたいね。照れてるの? 顔が赤いけど」
ルントゥの整った目鼻立ちは平静だった。目元にだけ親愛の微笑みと感情がほんの少しだけ浮かんでいる。レトラは黙って仕返しに、彼女のピンクパールのような乳首を指で突っついてやる。昨晩にさんざん吸われたお返しだった。
この寝床の甘たるい臭い、昨晩にレトラが垂れ流した母乳のせいなのか。恥ずかしいような酸っぱい臭いまでする。
「体拭きません? いっそ行水でもして、ついでに香水でもあれば」
「汗かいた?」
「だって! 私たちこんなので、クラフトマンさんに会いたくないです。あの人だって男ですから!」
ルントゥは額と唇に指を当てて、考えこむ仕草をするが、すぐにニヤッとした。
「パパは気にしないよ。むしろ喜びそう? 絶対に昨日の晩も聞き耳してたはず。からかってやったら良いんだわ!」
「うそ? 聞かれてた?」
「この部屋の斜め下がお義父様の部屋」
「ああっ! 聞いてないです!」
レトラは両手で顔を覆った。
同じこぢんまりした屋敷なのだから、それくらいは思い至ってしかるべきだった。
「聞かれてた? 聞こえてた? ああ、もう、私ってバカバカバカ」
今度から猿ぐつわでもしようか悩む。まさかあんな声を自分が出すとは思っていなかった。
ここまで来るまでに何度も死んだり殺された気がする。眠りの中でそのリセットされた結末の記憶を反芻していた。悪夢。忘れていたとしても深層に残っている記憶が再生されて、目覚めた時間の直感的な知恵に消化や結実されていく。他者の破滅の記憶までが流れ込んでくるようだ。
そんな夢の中で不安と恐怖に苛まれながら、腕の中で温かい何かが落ち着きと安心を与えてくれていた。だから、これまでの何十倍もの悪夢に見舞われながら、昔のように夜中に叫びながら飛び起きることもなかった。
意識が現実に引き戻される。
朝だ。部屋の中が明るくなっている。
横たわっているのは上質なベッドとお布団。
そして。
薄目を開ければ、ルントゥの寝顔。
すると一気に、レトラは昨晩までの記憶が戻る。急に顔が火照ってきてしまう。どうしようと迷った矢先に、ルントゥが瞼を開く。
夜闇では気がつかなかった、深いアメジストの奥ようなパープル。けれども透明ではなく、紫と金銀の金属が入り混じる粒子が混ざり込んだり裏打ちしているかのような、魅惑的で神秘的な光が織り込まれている。こうして明るい中で間近に覗き込むとよくわかる。
その瞳には見覚えがあった。
鉱物質な独特に輝くルントゥの虹彩は、レトラに白金貨と魔法の針を与えたあの青年に雰囲気が似ている。色調は違っていたが、パターンや種類が近いかもしれない。
隣の二十センチに横たわるレトラの熟視に気がついたのか、半魔族の少女はクスリと微笑んだようだった。寝起きで気にならなかったが、これほど近いというのはキスでもするのでない限りは珍しい。窓からの陽光で光をおびた淡いブロンドの頭は自分の腕を枕にしている。抱き合った感触からして服を着ていないらしいことに気がつく。
「おはよう」
ルントゥは悪びれもしない、ほがらかな小声で囁いて身体を起こす。掛布が肩を滑り落ちて、シルクの魚のような裸身に座り込んで、レトラは息を呑んでしまう。きっと自分よりも何倍も可憐で美しい彼女がありふれた自分を求めてきたのが信じられなくなる。
思い出せば頬が火照ってきそうだった。
まるで落ちてくるように顔が迫る。
おでこ同士が触れた。
「熱でもあるのかと思ったけど。大丈夫みたいね。照れてるの? 顔が赤いけど」
ルントゥの整った目鼻立ちは平静だった。目元にだけ親愛の微笑みと感情がほんの少しだけ浮かんでいる。レトラは黙って仕返しに、彼女のピンクパールのような乳首を指で突っついてやる。昨晩にさんざん吸われたお返しだった。
この寝床の甘たるい臭い、昨晩にレトラが垂れ流した母乳のせいなのか。恥ずかしいような酸っぱい臭いまでする。
「体拭きません? いっそ行水でもして、ついでに香水でもあれば」
「汗かいた?」
「だって! 私たちこんなので、クラフトマンさんに会いたくないです。あの人だって男ですから!」
ルントゥは額と唇に指を当てて、考えこむ仕草をするが、すぐにニヤッとした。
「パパは気にしないよ。むしろ喜びそう? 絶対に昨日の晩も聞き耳してたはず。からかってやったら良いんだわ!」
「うそ? 聞かれてた?」
「この部屋の斜め下がお義父様の部屋」
「ああっ! 聞いてないです!」
レトラは両手で顔を覆った。
同じこぢんまりした屋敷なのだから、それくらいは思い至ってしかるべきだった。
「聞かれてた? 聞こえてた? ああ、もう、私ってバカバカバカ」
今度から猿ぐつわでもしようか悩む。まさかあんな声を自分が出すとは思っていなかった。