一流御曹司は若い婚約者よりも45歳の私を溺愛する
背筋の伸びたその姿勢、漂う大人びた香り。

そして隠しきれない圧倒的な存在感。

私たちは触れてもいない。

なのに私の心臓はバクバクと暴れ出し、その音を彼に聞かれてしまうのではないかと不安になるほどだった。

もしもこれが、長年忘れていた恋の始まりだとしたら。

45歳という年齢を重ねて、今さらこんなにも無謀な恋をしているのだろうか、私は。

自分自身に問いかけながら、私は彼が求める花を選ぼうとショーケースの前に立った。

彼と私。この店で交差した偶然が、私の静かだった日常を鮮やかに、そして残酷なまでに塗り替えようとしていた。

彼の一挙手一投足に引き寄せられながら、私はただ、花を選ぶという作業に縋り付くしかなかった。

この瞬間が、もう二度と戻らないとしても、私は彼の瞳に映る一輪の花になりたかった。
< 18 / 30 >

この作品をシェア

pagetop