桜花転生奇譚
……振る話題を、間違えたかもしれない。

「……私は、一般的な家庭で生まれ育ったよ。それでさ、ひかりちゃんに聞いて欲しかったんだ。前の職場の愚痴を」

だから、私は話題を変える。ひかりちゃんは「いいよ」と言った。

再びちらりとひかりちゃんの方を見てみれば、ひかりちゃんは笑顔を浮かべている。

私は拠点に着くまでの間、ひかりちゃんに愚痴を聞いてもらうことにした。

ひかりちゃんは「うん」と相槌を打ちながら、私の話を聞いてくれる。

「……それはやばいな」

「でしょ!?」

愚痴を聞いてもらっていたら拠点に着いて、私とひかりちゃんは開けっ放しの門をくぐって、私が今日から過ごす屋敷へと向かった。

屋敷の玄関前でひかりちゃんは立ち止まって、荷車を下ろす。引き戸を開けたひかりちゃんは、着物の懐から折りたたまれた紙を取り出した。

「……優月ちゃんの部屋は、と……」

紙を広げながら、ひかりちゃんは呟く。

少し紙に目を落としていたひかりちゃんは、私と目を合わせると「今から、優月ちゃんの部屋に案内するわ」と言って屋敷の中へと入っていった。

私は、ひかりちゃんの後を追いかける。

中は、広い廊下が広がっていた。片方は縁側になっていて、片方は白い壁と障子で構成されている。

「と、ここが優月ちゃんの部屋やね」
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