桜花転生奇譚
「前にも説明したが、丸太くんを破壊出来たら試験は合格だ……行け、丸太くん!」

猛さんの指示に、ゆっくりと大きな人形――丸太くんは動き出す。

私の目の前で、丸太くんは右腕を振り上げた。丸太くんの右腕は私の近くにある地面に当たる。その衝撃で、ぶわりと風が吹いた。

……怖い……。

玲さんたちと稽古をしていた時とはまた雰囲気が違って、私は恐怖に支配される。

「優月ちゃん!稽古の時と同じようにすれば、大丈夫だよ!」

ひかりちゃんの声が、聞こえる。稽古の時と、同じように……。

私は深呼吸をすると、丸太くんの動きを見た。とてもゆっくりと動いていて、攻撃する隙はたくさんある。

でも、私は剣が苦手。皆に相手をしてもらったことはあるけど、誰にも勝てたことが1回もない。構えだけは上手だと、玲さんに褒められたけど……。

……攻撃するなら、魔術だよね。まだ、魔術の方が得意だ。皆の足元にも及ばないけどね。

……丸太くん、よく燃えそうだな……。

私は構えを解くと、懐から1枚の細長い紙――護符を取り出す。護符は魔術が編まれていて、魔力を流して放つだけで魔術が発動する優れもの。

1枚につき1度しか使えないけど、私でも安定して強力な魔術を使えるのは、とてもありがたいことだ。

この護符は、手先の器用なひかりちゃんに作ってもらった。
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