桜花転生奇譚
もう少し力を抜いて、魔力を込めすぎないように……。

蒼さんの助言通りに体に入っていた力を抜いて、もう一度、護符に魔力を流して「おいで」と語りかけてみる。

「……お」

護符を見つめていた蒼さんが、不意に声を出した。護符に変化はないけど、さっきまで真剣そうだった蒼さんの表情に、笑みが浮かんでいる。

「うん。反応はしてる……もうちょっと練習すれば、式神が出せるようになるかもしれないよ」

蒼さんの言葉に、私は「本当ですか!?」と声を出した。

「よし、頑張ろ!」

そう意気込んで、私は練習を続ける。練習を続けて、数回目。

護符に魔力を込めて、「おいで」と語りかければ、私の手の中にあった護符が消えて、ポンッと音がした。

私の目の前には、黒い長毛の犬がいる。犬は大人しく座っていて、私を見つめていた。犬種は……分からない。

「……成功だ。ゆっきーの式神は、犬か……」

蒼さんが、そう呟く。今、蒼さん……成功……って。

「……やった!!」

式神を出すことに成功して、私は嬉しさから思わずはしゃぐ。

私の式神らしい犬をずっと見つめていた蒼さんは、ふと顔を上げた。そして「玲」と呟く。

蒼さんの視線を辿ってみれば、私たちから少し距離がある場所に玲さんがいた。少しだけ私たちの方を見ていた玲さんは、どこかへと歩いていった。
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