桜花転生奇譚
それから数日後の昼下がり。私は、今日も仕事で見回りのために大江戸の町を歩いていた。
人通りの少ない道を歩いていると、前から誰かが走ってくる。赤い縦縞模様の着物を着た女性だ。
女性は私の目の前でよろけると、私に向かって倒れ込んだ。私は、女性を受け止めると何とか倒れないように踏ん張る。
「大丈夫ですか?」
私が声をかけると、女性は「大丈夫です。すみません」と私から離れると頭を下げた。
私が「大丈夫ですよ」と返すと、女性は顔を上げた。頭を上げた女性は、私を見つめる。
「もしかして……祓魔師隊の方、ですか?」
女性の言葉に、私は「えっ?」と反応した。反応してから、今私が着ているのが隊服で、祓魔師の隊服にのみ桜の模様があしらわれていることを思い出す。
「助けてください。私、怪異に追われていて……ッ!」
女性が、後ろを向いた。近くから、何かを引きずるような音がする。
曲がり角から顔を覗かせたのは、全身毛むくじゃらの怪異。怪異が歩く度に、地面に付いた毛が擦れる音がする。
「……お願いします。あの怪異を、倒してください……ッ!」
女性は、そう言って私の後ろへと移動した。私は、懐からひかりちゃん特製の護符を引っ張り出す。