桜花転生奇譚
「……ひーちゃん、部屋に戻らないの?確か、ひーちゃんって非番だったよね」

ひーちゃんに聞いてみれば、ひーちゃんは「蒼さんが食べ終わるまで、ここにいる。心配だもん」と僕の前に座る。本当に、僕が食べ終わるまで居座るつもりだ。

「……ひーちゃんはさ、前回もここにいてくれたよね」

まだ、ゆっきーがここに来る前。僕は、魔力の使いすぎで今日と同じような状態になったことがあった。その時も、ひーちゃんは僕が食べ終わるまでここにいてくれた。ひーちゃんが、出来る限りの看病をしてくれた。

「……病人を放っておけないからさ。ぼくは、そこまで薄情な人間じゃない」

僕がこんな状態だからか、ひーちゃんはいつもよりも声を落として話す。

「……そっか」

……好きだな。ひーちゃんの、さりげない優しさが。

「ひーちゃんはさ」

僕の言葉に、ひーちゃんは「うん?」と僕を見つめた。その顔には、優しい笑みが浮かんでいる。

「……優しいよね」

呟くように言えば、ひーちゃんは少し驚いた顔をした。

「……蒼さんが思うほど、優しい人間でもないんだよ」

僕から視線を逸らして、ひーちゃんはそう言う。

「そんなことないよ。優しくなかったら、さりげない気遣いなんて出来ないじゃん。ほら、何も言ってないのに匙を出してくれたり、お粥にしてくれたり、食べやすいように切ってくれたりさ。優しい人間だよ。ひーちゃんは」
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