腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「あのですね……赤ちゃんが、できたかもしれません」
 萌音が頬を赤らめながら、自身の下腹部に手を添えるのが見えた。
〝赤ちゃんができたかもしれない〟
 思いもしないカミングアウトに一瞬、頭がついていかなくて目を瞬かせた。そのうちにドクドクと心音が高鳴り出したのは、やっと理解が追いついたからだろう。
「萌音のお腹の中に俺たちの赤ちゃんが」
 そっと掌を下腹部の萌音の手に重ね合わせるととめどない歓喜に包まれ、じんわりと視界が滲む。
 こんなにも心が震えるサプライズは生まれて初めてかもしれない。
「生理が遅れていたのでもしかしたらと思って。昨日検査薬を試してみたら、陽性反応が出て……」
「そうだったのか。体調は大丈夫? 無理はするなよ。ひとまず明日、改めて一緒に病院に行こう。俺も付き添うから」
「はい。一緒だと心強いです。って、あれ? 紫苑さん泣いてます?」
 萌音が俺の顔を覗き込んできて、宙で視線が交わった。
 どうやら俺はうれし涙が流せる人間だったらしい。
 こんな尊い感情を教えてくれたのは、紛れもなく萌音だ。
「だってこんなにも幸せなことはないだろ?」
 なにがあっても、愛する妻とお腹の子を守り抜いてみせる。
 ふんわりと笑う萌音の額にキスを落としてから、優しい力で抱き寄せた。


 本編END

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