腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「それもそうだったな。この際だから担当直入に言う。婚約者のフリをしてくれないか?」
「へぇ?」
 こ、婚約者のフリをしてくれないかって?
 予期せぬことを言われ、思わず間抜けな声が出てしまった。
 鹿波さん正気ですか?
 いや、きっと私の聞き間違いだよね?
 鹿波さんが私にそんなことをお願いするわけが……ない。
 よし、もう一度確かめてみよう。
「あ、あの今、なんと仰いました? ちょっと聞き取れなかったので……」
「君に婚約者のフリをしてほしいと頼んでいる」
 どうやら私の聞き間違いでも、勘違いでもなかったらしい。
「あの……ちょっと意味が分からないというか、そんなことを急に言われても……」
 自然と首を横に振りながら眉根を下げた。
「まぁ、いきなりこんなことを言われてもそうなるよな。続きはここで話すのもなんだから、このあと少し付き合ってくれ」
 理解がまったく追いついていない私の耳に、鹿波さんの淡々とした声が届いた。
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