腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「だったら、実際に試してみるか?」
 近くで見ているだけで満足していたはずなのに、彼女に触れたい衝動が沸々と湧き上がってきて抑えられなかった。気づけば、彼女の後頭部に手を回し、唇を奪っていた。
「……んっ、」
 彼女の口もとから蠱惑的な声が漏れる。それは媚薬のように俺の脳内に流れこんできて、ますます気持ちが昂った。
 でも、ここで暴走しすぎるのはよくないと分かっている。
 一握りの理性が働き唇を解放すると、とろんとした表情の萌音と視線が交わった。
「どうだった? 不意打ちのキスは」
 いろんな意味で体も心も落ち着かない状態だが、平静を装って聞いてみる。
「えっと……すごかったです。すごく!」
 なにがどうすごかったは不明だが、嫌がっている素振りはないので心の中で静かに安堵する。
「あの……これは恋愛指南の一貫という認識で合っていますか?」
 その直後、急に真面目な顔をしてそう聞いてくる萌音。
 まぁ、そういうことにしておこうかと頷いてみせた。
「そうなのですね。では、もうひとつお聞きしますが、キスの先も指南していただけるということでしょうか?」
「ん?」
 萌音に思わぬことを聞かれ、さすがの俺も固まってしまった。
 キスの先とは、おそらくセックスのことを言っているのだろうが。
 萌音がそんなことを直球で聞いてくるだろうか?
 さっきまであれほどウブな反応を見せていたのに、今は戸惑った様子もまるでない。萌音は至って真面目な顔をしている。
 なにかが変だ。もしかして……。
 一応、確認してみるか。
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