腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます

これは〝好き〟という感情なのでしょうか

【これは〝好き〟という感情なのでしょうか】

 山里にある温泉街。目の前には大正ロマンを感じさせるノスタルジックな世界が広がっていて、川に沿って植えられた木々からは初夏の爽やかな香りが漂ってくる。
「こういう景色って癒されるよね」
 隣にいる友人の相川(あいかわ)芽衣(めい)が遠い目をしながらそうつぶやく。
「うん。そうだね」
 肺いっぱいに澄んだ空気を吸いこんでみる。都会では決して経験できない贅沢な時間である。
 六月に入って最初の週末。私は芽衣と毎年恒例のイベントである旅行に出かけていた。
 芽衣とは幼稚園からの付き合いだ。大学までエスカレーター式の学校だったので常に一緒にいたし、私が心を許せる数少ない親友のひとりである。
 芽衣はサバサバとした性格で面倒見がよく、学生時代は男女問わずモテていた。手足が長くスタイルも抜群にいい。ショートカットの黒髪と色白の肌、そして涼しげなひとえの瞳が印象的な、まさにクールビューティという言葉が似合う人物である。
「どこのお店から回る?」
 旅館に荷物を預けたあと、芽衣がパンフレットを見ながら尋ねてくる。
「うーん、かりんとう饅頭が気になるかも。あと確かカレーパンも有名だったよね?」
「私もかりんとう饅頭とカレーパンが気になっていたの。さっそく行ってみようか」
 芽衣とは嗜好が似ているので、いつもお店選びはスムーズである。
 近況を報告し合いながら、石畳を歩きだした。
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