腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「極楽だねぇ」
 芽衣が温泉に浸かりながら、うっとりと目を細める。私も隣に陣取り、源泉かけ流しの温泉を楽しんでいた。
 檜風呂のあるバスフロアの横にはガラス戸を隔てて一体化したバルコニーがあり、とても開放的だ。加えてバルコニーからは湯浴したまま四季折々の景色が見渡せるという贅沢な造りである。
 極めつきは少しとろみのあるこのお湯である。浸かると肌がツルツルになるらしく、美人の湯と言われているとか。
 その恩恵を最大限に受けようと、私は必死に体にその湯を塗りたくる。
「萌音ってば、なにやってるの?」
 そんな私を見て、芽衣が首を傾げる。
「こんな贅沢な湯に浸かれるなんてめったにないから、できる限り塗り込んでおこうかと」
「ちょっと笑わせないで。萌音ってば面白すぎ」
 クスクスと笑い出した芽衣が私の真似をしだした。
「そういえば、鹿波さんとは仲良くやってる?」
 じゃれ合っていたら、ふいにそんなことを聞かれた。
 親友の芽衣には紫苑さんとのいきさつをすべて伝えているので、たまにこんなふうに尋ねてくる。
「うん、まぁね。この前、お礼に手料理を振る舞ったら、美味しいって食べてくれて……それで……」
 キスされたんだった。
 そのシーンが脳裏に鮮明に浮かび上がってきて、思わず頬が熱くなる。
「それで? もしかして、萌音的にキュンキュン展開があったとか?」
 にやりと笑い私の顔を覗いてくる芽衣。私の機微をまったく見逃さないところはさすが親友である。
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