腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます

すれ違いは、恋愛漫画のお約束展開ではあるのですが

【すれ違いは、恋愛漫画のお約束展開ではあるのですが】

 芽衣との旅行から二週間が過ぎた。
 あの日、自覚した紫苑さんへの恋心。
 芽衣からはこのまま突っ走れと助言されたけれど、自分の気持ちに気づいて以来、どう紫苑さんに接したらいいのか分からなくなっている。しまいには意識しすぎて、会社でもプライベートでも避けてしまっているという微妙な状況である。
 会社帰り、つり革を握りながら電車の窓を流れていく景色をぼんやりと見つめていた。そのうちにあの日のキスが脳裏に鮮明に蘇ってきて、自然と体が熱くなる。
 紫苑さんに会いたいな。
 あの笑顔に癒されたい。
 ちょっと意地悪な一面もギャップ萌えで、胸がキュンキュンしちゃうんだよね。
 あれだけ過去のトラウマに支配されていたのに今は一丁前に恋をしているのだから、人生は本当になにがあるか分からない。
 ニヤリと口もとを緩めたそのとき、電車が止まった。
 ふとホームの駅名表示に目を向ける。
 あっ、と思わずそんな言葉が漏れそうになる。
 ぼんやりとしていたせいで、最寄り駅についたことにも気づかない始末だ。
「……す、すみません! 降ります!」
 慌てて乗降口に向かい、電車を降りた。
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