腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます

誰もが憧れる王子様の裏の顔

【誰もが憧れる王子様の裏の顔】


突然の婚約破棄から四年が経ち、私は父親が経営する製薬会社『()(ざき)製薬』で働いている。
城崎製薬は都内の一等地に自社ビルを構えている。三階にある新薬部に所属する私は、MR職に就いている。
MRとは医療情報担当者の略で、いわゆる営業担当だ。薬物療法の向上のため、医師や薬剤師などの医療従事者に対して自社医薬品の品質や安全性、ならびに有効性や副作用などの情報を提供するのが主な仕事である。
「城崎製薬さん、どうぞ」
 担当病院の待合室で待っていると、スタッフに呼ばれ長椅子から立ち上がった。
「失礼します」
 診察室に入ると、(かん)()先生が笑顔で出迎えてくれた。彼は四十代の小柄な男性医師で、物腰がやわらかくとても話しやすい。
「今日は花粉症治療薬についてでしたよね」
手で「どうぞ」と示され、軽く頭を下げてから椅子に腰を下ろす。そして、持参したパンプレットを菅野先生に差し出した。
「はい。こちらのアリノンは一日一回の服用で幅広い年齢に使え、また従来の内服薬に比べて眠気が非常に出にくいという特性があります」
 そして先生の目を真っ直ぐに見据えながら、頭に叩き込んできた知識を説明しだした。
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