腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「萌音の読んでるやつ、そんなに面白いんだ?」
 ふいに腕を引かれ、あれよあれよといううちに紫苑さんの両足の間に座らせられていた。彼が私の肩に顎を乗せながら、漫画を覗き込んでくる。
 これは恋愛漫画でよくあるイチャイチャシーンそのものではないか。
 ふんわりと爽やかな石鹸の香りが鼻を掠める。とてつもなく距離が近くて、自然と鼓動が高鳴った。
「萌音さん、この漫画はどのあたりがおすすめポイントか教えてもらえませんか?」
 突然猫かぶりモードの紫苑さんが降臨し、後方を見やる。すると、クスッと笑う彼と目があった。
 きっと私を揶揄って楽しんでいるに違いない。まったく悪い男である。
 ここは私も負けてはいられない。
「そういえば、恋愛指南の続きはいつ教えてくれるんですか? 順を踏んでと仰っていましたが」
 ふいにそんな話題を振れば、一瞬、紫苑さんが目を見開いた。
 こういう動揺した顔は滅多に見られないので、ちょっとうれしくなってしまう。
 フフッとどや顔をしたら、それに気づいたのか紫苑さんが表情を引き締め直した。
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