トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
それから数時間後

病室の扉が開く

「失礼します」

振り返ると奏のお父さん、お母さん

そして音くんが大きな荷物を抱えて立っていた

「おじさん、おばさん」

俺たちは立ち上がる

お母さんは病室へ入った瞬間、目を丸くした

「すごい……」

その反応も無理はない

俺たちだって最初は同じだった

広いリビング

寝室

浴室

キッチン

まるで高級ホテルだ

音くんも辺りを見回しながら呟く

「病院じゃないみたい……」

優朔が苦笑した

「俺たちも同じこと言った」

少しだけ空気が和らぐ

そしてお父さんが静かに頭を下げた

「本当にありがとうございます」

「皆さんがいてくれたおかげで奏は助かりました」

俺たちは慌てて首を横に振る

「そんな」

「俺たちは何も……」

するとお母さんが涙ぐみながら言った

「それでもです」

「奏、一人じゃなかったから」

その言葉に誰も返せなかった

しばらく話しているとお父さんが続ける

「社長さんにも本当に感謝していて……」

その言葉に全員が顔を上げる

「音の学校のことまで考えてくださって」

音くんが少し照れたように笑う

「毎日送り迎えの車を出してくれるらしくて」

蒼依が目を丸くする

「え、マジ?」

「うん」

音くんが頷く

「だからしばらくはここから学校行くことになった」

「兄ちゃんのそばにいてあげてくださいって」

俺たちは思わず顔を見合わせた

どこまで気を回しているんだ

本当に社長はすごいな

お母さんも何度も頭を下げる

「家族みんなでここにいます」

「しばらくは奏のそばにいたいので」

その表情は疲れていた

でもどこか安心しているようにも見えた

少なくとも今は記者も来ない

SNSも届かない

安心して休める場所がある

それだけで大きかった

そんな話をしていると

病室の扉が再び開いた

看護師さんたちだった

その中央にはストレッチャー

「奏……」

お母さんが立ち上がる

ストレッチャーの上の奏は眠っていた

すうすうと静かな寝息を立てながら

まるで子供みたいに

看護師さんが微笑む

「途中から眠ってしまったので」

「このままベッドへ移しますね」

その声も優しい

数人で手際よく移乗を行う

慣れた動きだった

奏は起きない

よほど疲れているのだろう

ベッドへ移される

毛布がかけられる

点滴も確認される

そして全てが終わると看護師さんたちは静かに部屋を出ていった

残された俺たちはただ奏を見つめる

穏やかだった

ここ数日見たことがないくらい

苦しそうな表情もない

怯えた顔もない

ただ眠っている

その姿を見た瞬間

お母さんの目から涙が零れ落ちた

「……よかった」

震える声

「ちゃんと眠れてる」

そう言って奏の髪を優しく撫でる

母親の手だった

どれだけ心配していたのだろう

俺たちは何も言えなかった

その時

コンコン

再び扉が鳴る

入ってきたのは原先生だった

後ろには看護師さんもいる

先生は穏やかに頭を下げる

「皆さんお揃いですね」

そして奏の様子を確認してから

静かに言った

「それでは」

先生の表情が少しだけ真剣になる

「桜庭奏さんの病状についてご説明します」

部屋の空気が変わる

俺たちは自然と背筋を伸ばした

これから

先生の口から奏の本当の状態が語られるのだ
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