トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
病室へ案内されてからしばらくして

コンコン、と扉が鳴った

「失礼します」

入ってきたのは白衣姿の男性だった

四十代後半くらいだろうか

落ち着いた雰囲気で、どこか安心感のある人だった

「初めまして」

柔らかく微笑む

「私、この病院で総合診療科を担当しております

原と申します」

そう言って名刺を差し出してくれた

俺たちも慌てて頭を下げる

先生は奏の前へ行く

しゃがんで視線を合わせた

「桜庭さん」

「はい……」

まだ少し元気のない返事

「ここへ来たからには、まず身体と心の状態をしっかり確認しましょう」

「無理はしなくて大丈夫です」

「今は治療を受けることだけ考えてください」

その言葉に

奏は小さく頷いた

先生は続ける

「採血」

「CT」

「心電図」

「必要な検査を一通り行います」

「その上で精神科や心療内科の先生とも連携しながら進めていきましょう」

精神科

その言葉に奏の肩が少しだけ揺れた

でも先生はすぐに続ける

「特別なことではありません」

「今の状況なら誰だって心は疲れます」

「むしろ自然な反応です」

優しい声だった

責めるでもなく

決めつけるでもなく

ただ患者として向き合ってくれている

奏も少し安心したようだった

その後

看護師さんたちが入ってくる

ストレッチャーが運ばれてきた

「桜庭さん、移動しましょうか」

「……はい」

ストレッチャーへ移る

そして看護師さんたちと一緒に病室を出ていく

「行ってきます」

奏が小さく言う

「行ってこい」

「ちゃんと検査受けろよ」

「逃げんなよー」

蒼依の言葉に

奏が少しだけ笑った

そのまま扉が閉まる

静寂

広い病室に

俺たち三人だけが残った

さっきまで奏がいたベッドを見る

妙に静かだった

俺たちは自然とソファへ腰を下ろした

ふかふかすぎる

沈み込む

病院のソファじゃない

完全に高級ホテルだった

しばらく誰も喋らない

ようやく優朔が大きく息を吐いた

「……まさか社長が来るとはな」

その言葉に俺も苦笑した

「ほんとにな」

「びっくりした」

蒼依も頷く

「俺マジで夢かと思いました」

「海外にいるんじゃなかったんすか」

「いたよ」

俺はソファへ身体を預ける

「だから余計びっくりした」

優朔が苦笑する

「社長、ほとんど日本いないからな」

「俺も数回しか会ったことない」

「なのに実家まで来るとか」

蒼依が呟く

「本気なんすね」

その言葉に全員が頷いた

本気だ

社長は本気で俺たちを守ろうとしている

それが伝わった

だからこそ余計に胸が熱くなる

優朔が天井を見上げる

「僕さ」

ぽつりと言う

「正直、もう駄目かもしれないって思ってた」

誰も否定しなかった

俺も同じだった

蒼依も同じだったと思う

奏の状態

世間の反応

あの動画

全部が最悪だった

だからどこかで諦めかけていた

「でも」

優朔が続ける

「まだ終わってないよな、黒騎士」

その言葉に俺は静かに頷いた

まだ終わってない

証拠は見つかっていない

世間も敵だらけだ

でも、初めてだった

希望を持てたのは

俺たちは黙ったまま座る

大きな窓の外には東京の街並みが広がっていた

そして俺は心の中で願う

どうか

奏が少しでも休めますように

今だけは

何も考えずに眠れますように
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