トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
その時だった

トントン、と張り詰めた静寂を破るように、会議室の厚い木扉が控えめにノックされた

「失礼します……」入ってきたのは、一階の受付を担当している女性スタッフだった

その表情は心なしか強張っており、あからさまに緊張した色を滲ませている

そのただ事ではない様子に、俺たちの胸の奥に嫌な予感がよぎった

座っていた俺と優朔、そしてソファから飛び起きた蒼依の視線が、自然と一箇所に集中する

「どうした?」

俺が声をかけると、スタッフはごくりと唾を飲み込み、声を潜めて告げた

「あの……『黒騎士』の皆様と、それから社長に、どうしても直接お会いしてお話したいという方が、今、一階の受付にいらっしゃっているのですが……」

その一言で、会議室の空気が目に見えて一瞬で凍りついた

俺と優朔、そして蒼依は、弾かれたように互いに顔を見合わせる

誰もが口に出さずとも、脳裏に全く同じ最悪の可能性を思い浮かべていた

……まさか、あの女か?

奏を執拗に追い詰め、あの悍ましい嘘の告発動画をネットに晒した、すべての元凶であるあの女性

蒼依の顔が恐怖と怒りでみるみるうちに硬直していき、優朔も形の良い眉を不機嫌そうにきつく寄せた

「……名前は? 何て名乗ってるんだ」

優朔が詰問するように尋ねるが、スタッフは怯えたように小さく首を横に振るばかりだった

「それが、詳しくはお話しいただけなくて……ただ、どうしても今すぐお伝えしたい大事なことがあると……」

背筋を冷たい汗が、つうっと伝っていくのが分かった

もし本当にあの動画の張本人だったとしたら、一体何をしにこの渦中の事務所まで乗り込んできたというのか

これ以上、俺たちから何を奪おうというのか

目的が全く見えなかった。不穏な沈黙のなか、部屋の奥のデスクで腕を組んでいた社長が、静かに、けれど揺るぎない足取りで立ち上がった

「……とりあえず、ここへ通して」

その声だけは、いつものように冷静で、大人の余裕を崩していなかった

スタッフは「かしこまりました」と深く頭を下げ、足早に部屋を出ていく

パタンと扉が閉まり、再び訪れる数十秒の長い沈黙

誰もが呼吸の仕方を忘れたかのように、入り口のドアノブへと視線を釘付けにしていた

やがて、再びゆっくりと扉が開く

俺たちは全身の筋肉を硬直させ、入ってくる人物を真っ直ぐに見据えた。

そして——あまりの予想外の光景に、その場にいた全員が、思わず言葉を失って固まった

そこに立っていたのは、俺たちの想像とは全く違う、見知らぬ一人の女性だった

年齢は二十代の後半くらいだろうか

丁寧に切り揃えられた清潔感のある黒髪に、派手さのない地味なネイビーのビジネススーツ

メイクも驚くほど薄く、どこにでもいるごく普通の、真面目そうな会社員にしか見えなかった

少なくとも、あの画面の向こうで悪意に満ちた笑みを浮かべていた、あの女では絶対にない
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