トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
俺たちの気配に気づいた奏が、ゆっくりとこちらを振り向いた

そして、どこか呆れたように、小さく笑ってみせた。

「……皆さん、毎日毎日、そんな律儀に来なくてもいいっすよ」

まだ少しだけ弱々しいけれど

それは、俺たちがずっと取り戻したかった、いつもの奏の大好きな笑顔に限りなく近かった

その生意気なセリフに、蒼依が即座に食い気味に言い返す

「うるせぇ。来るに決まってんだろ、バカ」

奏が、大げさに肩をすくめて苦笑する

「ほんと、過保護すぎ……」

「当たり前でしょ。誰のせいでこんなにハラハラしたと思ってるの」

後ろから入ってきた優朔も、いつもの淡々としたトーンのまま、けれどその眼差しを優しく和らげて言葉を添えた

その見慣れたくだらないやり取りだけで、張り詰めていた病室の空気が、目に見えて柔らかく、温かいものへと融けていく

奏も声を漏らして笑った

本当に、少しだけ。でも、あいつは確かに、自分の心から、俺たちの前でちゃんと笑ってくれたんだ

ただそれだけの事実が、今の俺たちにとっては涙が出るほど嬉しかった

俺は窓際の近くにある丸椅子を引き寄せ、腰掛ける

改めて奏の姿をじっと見つめた

まだまだ痩せ細っているし、無理は絶対にさせられない状態だ

「体調は、どうだ。どこか痛むところはないか?」

静かに問いかけると、奏は視線をもう一度、窓の外の遠い夜景へと戻した。

「……だいぶ、楽になりました。熱ももう完全に平熱ですし、ご飯もちゃんと残さず食べられてます。さっき、夜勤の先生に見回りに来てもらったんですけど、病院食を完食したって言ったら、子供みたいにめちゃくちゃ褒められました」

その報告に、後ろで聞いていた蒼依が「ぶっ」と堪えきれずに吹き出す

「小学生かよお前は」

「失礼な。完食するの、今の俺にとっては大事業なんだから」

奏が少しだけ不満そうに、唇を尖らせてみせる

その人間らしい表情の数々を見て、俺の胸の奥からも、思わず温かい笑いが溢れ出してしまった

良かった。本当に、良かった。あいつの心が、あいつの時間が、少しずつ、でも確実に俺たちの元へと戻ってきている

すると、奏がふと悪戯っぽく笑うのをやめ、不思議そうな瞳で俺たち三人を見つめてきた

「……ところで、そっちは? 何か進展でもあったんですか?」

その剥き出しの質問に、俺と優朔は、思わず顔を見合わせてニヤリと笑みを交わした

隣の蒼依に至っては、もう今すぐにでもすべてを大声でぶちまけたくて仕方ががないといった様子で、ソワソワと全身を強張らせている
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