トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
優朔side
病院を出たあと
陽貴と蒼依と別れ、僕はマンションへ戻った
時刻はもう深夜を回っている
エレベーターの中でふと鏡を見る
思った以上に疲れた顔をしていた
この二か月まともに休めた記憶がない
奏のこと
黒騎士のこと
世間のこと
考えない日はなかった
今日だって証拠が揃った
希望が見えた
本来なら喜ぶべき日だ
それなのに胸の奥は妙に重かった
玄関の前で立ち止まる
鍵を差し込む
ガチャ
扉を開ける
するとリビングの明かりがついていた
「おかえり」
聞き慣れた声
顔を上げる
ソファの上で毛布に包まっていた梓が立ち上がった
思わず時計を見る
深夜一時過ぎ
「まだ起きてたの?」
「うん」
梓は小さく笑う
「待ってた」
その一言だけで肩の力が抜ける
靴を脱ぐと梓が近付いてくる
そして何も言わず背中へ腕を回した
ぎゅっと
静かに抱き締められる
その瞬間張り詰めていたものが緩んだ
「お疲れさま」
耳元で聞こえる声
優しい声だった
目を閉じる
「……ん」
それしか言えなかった
梓は何も聞かない
病院で何があったか
奏がどうだったか
証拠がどうだったか
何も聞かない
ただこうして抱き締めてくれる
それがありがたかった
しばらくして梓が顔を上げる
「ご飯食べた?」
「いや」
「やっぱり」
呆れたように笑う
「温めるから座ってて」
そう言ってキッチンへ向かう
ソファへ腰を下ろしてぼんやりとその背中を見る
エプロン姿
髪をまとめる仕草
冷蔵庫を開ける姿
どれも見慣れた光景なのになぜか泣きそうになる
数分後
テーブルへ料理が並ぶ
「簡単なものだけど」
「ありがとう」
向かい合って座る
食べながら今日のことを少しずつ話した
証拠が揃ったこと
第二会見のこと
奏のこと
お母さんの話
梓は静かに聞いていた
途中で何度も頷きながら
全部聞き終えたあと梓はぽつりと言う
「奏くん頑張ってるね」
その言葉に頷く
「うん」
「本当に頑張ってる」
梓は少しだけ目を伏せた
「だから焦らなくていいと思う」
静かな声だった
「みんな早く元に戻りたいと思ってるだろうけど」
「奏くんは今、生きるだけで精一杯なんだと思う」
僕は箸を止める
その通りだった
僕たちはつい先を見てしまう
復帰
会見
裁判
未来
でも
奏は今を生きることで必死なんだ
梓は続ける
「だから優朔も無理しないで」
「え?」
「顔」
そう言われる
「ずっと気張ってる顔してる」
思わず苦笑した
隠していたつもりだった
でも梓には全部バレる
「僕そんな顔してたかな」
「してる」
そして梓はテーブル越しに僕の手を握る
温かい
「優朔」
名前を呼ばれ自然と視線が合う
「一人で頑張らなくていいから」
その言葉が胸に刺さる
今まで何度も言われた言葉
でも今日のそれは妙に響いた
僕は小さく笑った
「分かってる」
そう言うと梓も笑った
その笑顔を見た瞬間ようやく今日一日が終わった気がした
どんなに辛い日でも
どんなに苦しい日でも
僕には梓がいる
それだけでまた明日も頑張れる気がする
言葉なんていらなかった
互いを信じていることも
大切に思っていることも
その温もりだけで十分伝わっていた
病院を出たあと
陽貴と蒼依と別れ、僕はマンションへ戻った
時刻はもう深夜を回っている
エレベーターの中でふと鏡を見る
思った以上に疲れた顔をしていた
この二か月まともに休めた記憶がない
奏のこと
黒騎士のこと
世間のこと
考えない日はなかった
今日だって証拠が揃った
希望が見えた
本来なら喜ぶべき日だ
それなのに胸の奥は妙に重かった
玄関の前で立ち止まる
鍵を差し込む
ガチャ
扉を開ける
するとリビングの明かりがついていた
「おかえり」
聞き慣れた声
顔を上げる
ソファの上で毛布に包まっていた梓が立ち上がった
思わず時計を見る
深夜一時過ぎ
「まだ起きてたの?」
「うん」
梓は小さく笑う
「待ってた」
その一言だけで肩の力が抜ける
靴を脱ぐと梓が近付いてくる
そして何も言わず背中へ腕を回した
ぎゅっと
静かに抱き締められる
その瞬間張り詰めていたものが緩んだ
「お疲れさま」
耳元で聞こえる声
優しい声だった
目を閉じる
「……ん」
それしか言えなかった
梓は何も聞かない
病院で何があったか
奏がどうだったか
証拠がどうだったか
何も聞かない
ただこうして抱き締めてくれる
それがありがたかった
しばらくして梓が顔を上げる
「ご飯食べた?」
「いや」
「やっぱり」
呆れたように笑う
「温めるから座ってて」
そう言ってキッチンへ向かう
ソファへ腰を下ろしてぼんやりとその背中を見る
エプロン姿
髪をまとめる仕草
冷蔵庫を開ける姿
どれも見慣れた光景なのになぜか泣きそうになる
数分後
テーブルへ料理が並ぶ
「簡単なものだけど」
「ありがとう」
向かい合って座る
食べながら今日のことを少しずつ話した
証拠が揃ったこと
第二会見のこと
奏のこと
お母さんの話
梓は静かに聞いていた
途中で何度も頷きながら
全部聞き終えたあと梓はぽつりと言う
「奏くん頑張ってるね」
その言葉に頷く
「うん」
「本当に頑張ってる」
梓は少しだけ目を伏せた
「だから焦らなくていいと思う」
静かな声だった
「みんな早く元に戻りたいと思ってるだろうけど」
「奏くんは今、生きるだけで精一杯なんだと思う」
僕は箸を止める
その通りだった
僕たちはつい先を見てしまう
復帰
会見
裁判
未来
でも
奏は今を生きることで必死なんだ
梓は続ける
「だから優朔も無理しないで」
「え?」
「顔」
そう言われる
「ずっと気張ってる顔してる」
思わず苦笑した
隠していたつもりだった
でも梓には全部バレる
「僕そんな顔してたかな」
「してる」
そして梓はテーブル越しに僕の手を握る
温かい
「優朔」
名前を呼ばれ自然と視線が合う
「一人で頑張らなくていいから」
その言葉が胸に刺さる
今まで何度も言われた言葉
でも今日のそれは妙に響いた
僕は小さく笑った
「分かってる」
そう言うと梓も笑った
その笑顔を見た瞬間ようやく今日一日が終わった気がした
どんなに辛い日でも
どんなに苦しい日でも
僕には梓がいる
それだけでまた明日も頑張れる気がする
言葉なんていらなかった
互いを信じていることも
大切に思っていることも
その温もりだけで十分伝わっていた