トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
陽貴side
第ニ回会見当日
目が覚めた瞬間から、心臓が嫌な音を立てていた
久しぶりによく眠れたはずなのに
胸の奥がずっと落ち着かない
今日で終わるわけじゃない
裁判もある
まだ戦いは続く
それでも今日が大きな分岐点になることだけは分かっていた
ベッドから起き上がり隣を見ると
紗凪はもう起きていた
リビングへ向かうと、キッチンから聞き慣れた音がする
「おはよう」
振り返った紗凪が柔らかく笑った
その笑顔を見た瞬間張り詰めていた気持ちが少しだけ緩む
「おはよ」
声紗凪は何も言わない
ただいつも通り朝食を並べてくれる
その”いつも通り”が今は妙にありがたかった
ここ最近まともに一緒の時間を過ごせていない
俺は毎日奏の病院へ通っていたし紗凪はフライトやICUで忙しい
同じ家に帰ってきても俺が帰る頃には寝ていて
朝起きたらもう仕事に行っている
そんな日もあった
それでもこうして今日ここにいてくれる
それだけで救われる
朝食を食べながらも落ち着かない
気付けばスマホを見てしまう
時計を見てしまう
何度も深呼吸してしまう
そんな俺を見て紗凪が少しだけ笑った
「緊張してるね」
図星思わず苦笑する
「まぁな」
第一会見の日も緊張した
でも今日は違う
今日は守る会見じゃない
反撃する会見だ
失ったものを取り戻すための会見だ
だからこそ怖かった
もし失敗したらもしまた何かひっくり返されたら
そんな考えが何度も頭をよぎる
食事を終え、身支度を整える
ネクタイを締める手が少し震えていた
鏡を見る
情けない顔をしている
すると後ろから紗凪が近付いてきた
「貸して」
そう言って俺のネクタイを整えてくれる
器用な指先
何度も見てきた光景なのに今日はなぜか胸が苦しくなった
紗凪は何も聞かない
怖くない?
大丈夫?
そんなことは言わない
ただ静かにネクタイを整えて
俺を見上げた
「陽貴くん」
名前を呼ばれる
自然と視線が合う
大きな瞳
真っ直ぐな眼差し
「頑張れって言わない」
紗凪が言った
俺は少し驚く
すると紗凪は小さく笑った
「だって十分頑張ってるから」
その言葉に胸が詰まる
二か月
本当に長かった
奏が壊れていく姿を見た
世間に叩かれた
何もできない無力感も味わった
それでもなんとか立っていた
「だから」
紗凪は続ける
「今日は陽貴くんが思ったことを伝えてきたらいい」
「うん」
「私はちゃんと知ってるから」
その言葉に危うく泣きそうになった
知ってる
たったそれだけなのに
どれだけ救われるんだろう
世間がどう言おうと
ニュースがどう書こうと
目の前のこの人は知っている
俺たちがどれだけ苦しんできたか
奏がどれだけ傷付いたか
全部
ちゃんと見ていてくれた
だからもう十分だった
紗凪がそっと俺の頬に触れる
「大丈夫」
静かな声
でも不思議なくらい力があった
「みんな信じてる」
その言葉に社長の顔が浮かぶ
優朔
蒼依
黒瀬さん
奏
そして紗凪
一人じゃない
本当にそうなんだと思った
俺は紗凪を抱き寄せた
ぎゅっと
少しだけ強く
紗凪も何も言わず抱き返してくれる
温かい
その温もりが戦う勇気をくれた
しばらくして身体を離す
時計を見る
そろそろ行かなきゃいけない
「行ってくる」
そう言うと紗凪は真っ直ぐ俺を見た
迷いのない目だった
そして柔らかく微笑む
「行ってらっしゃい」
その一言で十分だった
俺には待っていてくれる人がいる
だから今日は前を向ける
俺は玄関のドアを開けた
二か月間の苦しみを終わらせるために
そして
奏が安心して帰ってこられる場所を守るために
俺は会見会場へ向かった
第ニ回会見当日
目が覚めた瞬間から、心臓が嫌な音を立てていた
久しぶりによく眠れたはずなのに
胸の奥がずっと落ち着かない
今日で終わるわけじゃない
裁判もある
まだ戦いは続く
それでも今日が大きな分岐点になることだけは分かっていた
ベッドから起き上がり隣を見ると
紗凪はもう起きていた
リビングへ向かうと、キッチンから聞き慣れた音がする
「おはよう」
振り返った紗凪が柔らかく笑った
その笑顔を見た瞬間張り詰めていた気持ちが少しだけ緩む
「おはよ」
声紗凪は何も言わない
ただいつも通り朝食を並べてくれる
その”いつも通り”が今は妙にありがたかった
ここ最近まともに一緒の時間を過ごせていない
俺は毎日奏の病院へ通っていたし紗凪はフライトやICUで忙しい
同じ家に帰ってきても俺が帰る頃には寝ていて
朝起きたらもう仕事に行っている
そんな日もあった
それでもこうして今日ここにいてくれる
それだけで救われる
朝食を食べながらも落ち着かない
気付けばスマホを見てしまう
時計を見てしまう
何度も深呼吸してしまう
そんな俺を見て紗凪が少しだけ笑った
「緊張してるね」
図星思わず苦笑する
「まぁな」
第一会見の日も緊張した
でも今日は違う
今日は守る会見じゃない
反撃する会見だ
失ったものを取り戻すための会見だ
だからこそ怖かった
もし失敗したらもしまた何かひっくり返されたら
そんな考えが何度も頭をよぎる
食事を終え、身支度を整える
ネクタイを締める手が少し震えていた
鏡を見る
情けない顔をしている
すると後ろから紗凪が近付いてきた
「貸して」
そう言って俺のネクタイを整えてくれる
器用な指先
何度も見てきた光景なのに今日はなぜか胸が苦しくなった
紗凪は何も聞かない
怖くない?
大丈夫?
そんなことは言わない
ただ静かにネクタイを整えて
俺を見上げた
「陽貴くん」
名前を呼ばれる
自然と視線が合う
大きな瞳
真っ直ぐな眼差し
「頑張れって言わない」
紗凪が言った
俺は少し驚く
すると紗凪は小さく笑った
「だって十分頑張ってるから」
その言葉に胸が詰まる
二か月
本当に長かった
奏が壊れていく姿を見た
世間に叩かれた
何もできない無力感も味わった
それでもなんとか立っていた
「だから」
紗凪は続ける
「今日は陽貴くんが思ったことを伝えてきたらいい」
「うん」
「私はちゃんと知ってるから」
その言葉に危うく泣きそうになった
知ってる
たったそれだけなのに
どれだけ救われるんだろう
世間がどう言おうと
ニュースがどう書こうと
目の前のこの人は知っている
俺たちがどれだけ苦しんできたか
奏がどれだけ傷付いたか
全部
ちゃんと見ていてくれた
だからもう十分だった
紗凪がそっと俺の頬に触れる
「大丈夫」
静かな声
でも不思議なくらい力があった
「みんな信じてる」
その言葉に社長の顔が浮かぶ
優朔
蒼依
黒瀬さん
奏
そして紗凪
一人じゃない
本当にそうなんだと思った
俺は紗凪を抱き寄せた
ぎゅっと
少しだけ強く
紗凪も何も言わず抱き返してくれる
温かい
その温もりが戦う勇気をくれた
しばらくして身体を離す
時計を見る
そろそろ行かなきゃいけない
「行ってくる」
そう言うと紗凪は真っ直ぐ俺を見た
迷いのない目だった
そして柔らかく微笑む
「行ってらっしゃい」
その一言で十分だった
俺には待っていてくれる人がいる
だから今日は前を向ける
俺は玄関のドアを開けた
二か月間の苦しみを終わらせるために
そして
奏が安心して帰ってこられる場所を守るために
俺は会見会場へ向かった