トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
「お疲れ様でした!」
スタジオの隅々まで、本番終了を告げるスタッフたちの弾んだ声が響き渡る
ようやく——
本当に、ようやく今日という長い一日の、最後の収録が幕を閉じた
俺はセットの椅子から立ち上がりながら、胸の奥に溜まっていた熱い息を深く吐き出す
本当に、長い一日だった
朝一番の生放送から始まり、休む間もなく次の現場へ
情報番組のスタジオ、ラジオ局のブース、そしてこのテレビ局でのメイン収録
その合間を縫うようにして詰め込まれた、移動の車内と、分刻みの打ち合わせ
張り詰めていた緊張の糸が解けた瞬間、重力が増したかのような凄まじい疲労感がどっと身体に押し寄せてきた
すっかり静まり返った深夜の廊下を、楽屋へと戻る
ふと壁の時計に目をやると、長針と短針はすでに午前一時を回っていた
その容赦のない数字に、俺の口元から思わず乾いた笑いがこぼれる
「……流石に、身体に堪えるな」
俺が肩を回しながらぽつりと呟くと、すぐ隣を歩いていた蒼依が敏感に反応した
「社長、復帰初日からいくらなんでも厳しすぎないっすか……?」
普段の元気はどこへやら、蒼依は本気でぐったりとした様子で、ネクタイの結び目を緩めている
「一応、俺たち病み上がりですよ? 普通、こういうのってリハビリ期間とかあるもんじゃないんすか?」
「……ないな」
後ろを歩いていた優朔が即答する。
蒼依が、この世の終わりでも迎えたかのような絶望に満ちた表情を浮かべた。
「ですよねぇ……知ってましたよ……」
そのコントのようなやり取りに、俺と優朔の口から自然と笑いが漏れた。
疲れているのは、間違いのない事実だ
足の裏は信じられないほど重く、肩の筋肉はガチガチに凝り固まっている
喉を酷使したせいで、声も少しだけ掠れていた
それなのに不思議と、嫌な気分はこれっぽっちもなかった
むしろ、身体の奥底からじんわりと満たされていくような、確かな充足感に包まれている
目の前に、やるべき仕事があること
俺たちを必要とし、呼んでくれる大人がいること
そして何より、画面の向こうで待っていてくれるファンがいること
ほんの二ヶ月前、未来の予定がすべて白紙になり、終わりの見えない暗闇のなかで息を潜めていた頃の自分たちに伝えても、きっと気休めの嘘だと笑って信じないだろう。
「……忙しいって、めちゃくちゃ幸せなことなんだな」
誰に言うでもなく、胸の内から溢れた本音を漏らす
すると、隣の優朔がふっと目元を和らげ、小さく鼻で笑った。
「珍しく、真面目でいいこと言うじゃん」
「いや、本当にさ」
俺は苦笑交じりに髪をかき上げる
「一回すべてを失いかけてさ、初めて本当の価値が分かった気がするよ」
その言葉に、誰も異を唱える者はいなかった。
蒼依もいつの間にかおちゃらけるのをやめ、愛おしそうにスタジオの床を見つめながら静かに頷いている
きっと、胸の内で抱いている想いは完全に同じなのだ
スタジオの隅々まで、本番終了を告げるスタッフたちの弾んだ声が響き渡る
ようやく——
本当に、ようやく今日という長い一日の、最後の収録が幕を閉じた
俺はセットの椅子から立ち上がりながら、胸の奥に溜まっていた熱い息を深く吐き出す
本当に、長い一日だった
朝一番の生放送から始まり、休む間もなく次の現場へ
情報番組のスタジオ、ラジオ局のブース、そしてこのテレビ局でのメイン収録
その合間を縫うようにして詰め込まれた、移動の車内と、分刻みの打ち合わせ
張り詰めていた緊張の糸が解けた瞬間、重力が増したかのような凄まじい疲労感がどっと身体に押し寄せてきた
すっかり静まり返った深夜の廊下を、楽屋へと戻る
ふと壁の時計に目をやると、長針と短針はすでに午前一時を回っていた
その容赦のない数字に、俺の口元から思わず乾いた笑いがこぼれる
「……流石に、身体に堪えるな」
俺が肩を回しながらぽつりと呟くと、すぐ隣を歩いていた蒼依が敏感に反応した
「社長、復帰初日からいくらなんでも厳しすぎないっすか……?」
普段の元気はどこへやら、蒼依は本気でぐったりとした様子で、ネクタイの結び目を緩めている
「一応、俺たち病み上がりですよ? 普通、こういうのってリハビリ期間とかあるもんじゃないんすか?」
「……ないな」
後ろを歩いていた優朔が即答する。
蒼依が、この世の終わりでも迎えたかのような絶望に満ちた表情を浮かべた。
「ですよねぇ……知ってましたよ……」
そのコントのようなやり取りに、俺と優朔の口から自然と笑いが漏れた。
疲れているのは、間違いのない事実だ
足の裏は信じられないほど重く、肩の筋肉はガチガチに凝り固まっている
喉を酷使したせいで、声も少しだけ掠れていた
それなのに不思議と、嫌な気分はこれっぽっちもなかった
むしろ、身体の奥底からじんわりと満たされていくような、確かな充足感に包まれている
目の前に、やるべき仕事があること
俺たちを必要とし、呼んでくれる大人がいること
そして何より、画面の向こうで待っていてくれるファンがいること
ほんの二ヶ月前、未来の予定がすべて白紙になり、終わりの見えない暗闇のなかで息を潜めていた頃の自分たちに伝えても、きっと気休めの嘘だと笑って信じないだろう。
「……忙しいって、めちゃくちゃ幸せなことなんだな」
誰に言うでもなく、胸の内から溢れた本音を漏らす
すると、隣の優朔がふっと目元を和らげ、小さく鼻で笑った。
「珍しく、真面目でいいこと言うじゃん」
「いや、本当にさ」
俺は苦笑交じりに髪をかき上げる
「一回すべてを失いかけてさ、初めて本当の価値が分かった気がするよ」
その言葉に、誰も異を唱える者はいなかった。
蒼依もいつの間にかおちゃらけるのをやめ、愛おしそうにスタジオの床を見つめながら静かに頷いている
きっと、胸の内で抱いている想いは完全に同じなのだ