トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
そして、運命の本番のベルが鳴り響いた

スタジオへと一歩足を踏み入れると、きらびやかで広大なセットの奥、すでに司会者や他の出演者、そしてあの辛口コメンテーターがそれぞれの席についていた

こちらに気づいた彼が、ゆっくりと視線を動かしてくる

バチリと、正面から目が合った

相変わらず、すべてを見透かすような冷徹で鋭い眼差しだった

赤ランプが点灯し、番組の生放送がスタートする

画面には俺たちのこれまでの軌跡が映し出され、活動再開に至る経緯、第2会見の内容、そして複雑に揺れ動く世間の反応について、淡々とトークが進められていく

序盤の空気は、いたって穏やかだった。司会者もこちらの復帰初日に配慮してか、どこか気を遣いながら言葉を選んでくれているのが伝わってくる

けれど、やはり平穏な時間は長くは続かなかった

張り詰めた沈黙を破るように、例のコメンテーターが卓上のマイクへと手を伸ばす

その一瞬の所作だけで、スタジオの空気が目に見えてピリピリと凝縮されていくのが分かった

彼は眼鏡の奥の瞳で俺たちを真っ直ぐに射抜き、そして、容赦のない刃を突きつけてきた

「……率直に、伺います」

低く、信じられないほど静かで鋭い声が、スタジオのスピーカーを通して響き渡る

「今回の第2会見を経て、確かに世論は黒騎士側に大きく傾きつつあります。好意的な声が多いのも事実でしょう」

彼はそこで言葉を一度区切り、さらに踏み込んでみせた。

「ただ、肝心の裁判はまだ何一つ決着がついていません」

水を打ったように、スタジオが完全に静まり返る

「司法の場で白黒がはっきりしていない現状で、なし崩し的に活動を再開することに、強い違和感を覚える人々も確実に存在します。その批判的な声については、今、どう考えておられますか?」

一寸の誤魔化しも許されない、剥き出しの質問

だけど、今の俺たちに逃げるつもりなんて毛頭なかった

俺は迷うことなくマイクを握りしめ、彼の瞳を見据えたまま声を張る。

「……当然の疑問だと思います」

予期せぬ正面突破の回答に、スタジオのスタッフ陣が少しだけざわついた

俺は臆することなく、言葉を重ねていく

「おっしゃる通り、裁判はまだ続いています。僕たちが今ここに立っていることを、全員が納得し、祝福してくれているわけではないことも、痛いほど理解しているつもりです」

コメンテーターは、表情一つ変えずに俺の言葉を黙って聞き届けている。

「だからこそ——」

俺はカメラの向こう、そしてスタジオの全員に向けて、真っ直ぐに前を見据えた

「これからの僕たちの活動で、その答えを示していくしかないと思っています。綺麗に飾った言葉だけじゃなく、自分たちの這い上がる姿そのもので、証明していくしかありません」

静かに、けれど揺るぎない覚悟を込めて言い切る

その瞬間、視界の端で、隣に座る優朔が深く力強く頷いた

さらにその言葉を引き継ぐように、蒼依がマイクへ向かって熱く語りかける

「僕たちだって、これで全部が終わったなんてこれっぽっちも思ってないです。でも、ただ頭を下げて止まったままじゃ、応援してくれる人たちに対して何も進まないんで。だから、全力で走りながら証明します」

飾り気のない、本音の剥き出しの言葉

だからこそ、その熱量がスタジオの空気を震わせた

仕上げとばかりに、優朔がいつもより一段と低い声で、重みのある言葉を添える

「失った信頼は、言葉で言い訳するものではなく、行動で取り戻すものだと思っています」

三人それぞれの覚悟がスタジオに響き渡り、今度は誰の声も聞こえない完全な沈黙がその場を支配した

あの辛口コメンテーターは、しばらくの間、腕を組んだままじっと俺たちの顔を見つめていた

張り詰めた緊張感が限界に達しようとしたその時

——彼はふっと目元を緩め、小さく鼻で笑ってみせたのだ

「……なるほど」

それは、彼が今日スタジオに入ってから初めて見せた、どこか柔らかい表情だった

「少なくとも」彼はマイクの手を離し、背もたれにゆったりと体を預ける

「2ヶ月前の、あの悲壮感に満ちていた会見の時より、今のあなた方はずっといい顔をしていますね」

予想だにしない、認められたかのような言葉だった

一瞬にしてスタジオを支配していた重圧が霧散し、司会者もほっとしたように白い歯を見せて笑う

「ふふ、それは私も本当にそう思います」

その言葉を合図にするように、観覧席やスタッフ陣から、パラパラと、そして最後には割れんばかりの大きな拍手が沸き起こった

俺たちは自然と、お互いに顔を見合わせていた

もう、あの頃の俺たちじゃない。理不尽な逆風に怯え、世間の声から逃げ回っていた弱い自分たちは、もうどこにもいなかった

傷付いて、泥水をすすって、死ぬほど苦しかった

それでも俺たちは、自分たちの足で前へ進むことを選んだんだ

だから、この先どんな過酷な質問が飛んでこようとも、俺たちが下を向く必要なんて、もう2度とない
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